ニュースなどでよく耳にする「完全失業率」や「有効求人倍率」についてはあまり深く考えないという人も多いのではないでしょうか。
しかし、これから転職を考えている人にとって、世の中の流れを読むということは大切なことです。
- 今は景気が良いのか悪いのか
- 求人の動向はどうなっているか
- どんな業種が人材不足でどんな業種に人が多く集まっているのか
などについての情報を把握しておくことは、転職の方向性とタイミングを決めて行く助けになることでしょう。
そこで、最近の完全失業率と有効求人倍率の具体的な数値、これらのことに関する用語の意味、それぞれの結果から見えてくることなどについて順番に考えていくことにしましょう。
そうすれば、これから先のキャリアプランをどう考えていけばいいのか、自分なりのアイディアが浮かんでくるかもしれません。
完全失業率や有効求人倍率はどこで調べているのか?
完全失業率の調査は「総務省統計局」が行っています。調査は統計法に基づく基幹統計調査で、調査結果は毎月公表されます。
有効求人倍率の統計対象となる求人は、ハローワークで扱われた求人に限られており、新卒者を対象とした求人数や求職者数は対象外となっています。
そのため、一般企業が運営している求人サービス等で扱われている求人はこの統計の結果に一切含まれていません。
なお、有効求人倍率は「一般職業紹介状況」として厚生労働省がホームページで毎月公表しています。
求人や失業に関する動向
厚生労働省が発表した平成29年5月の有効求人倍率が、前年比0.01ポイント上昇して1.49倍となりました。この時点で既に3か月間連続のポイント上昇を記録しています。
特に正社員の求人倍率は集計を開始して以来最高の水準にまで上昇。景気は緩やかながら回復傾向にあることがわかります。
新規求人を産業別に見ると、「製造業」「運輸業、郵便業」「サービス業」などが増加しています。
一方、総務省が発表した労働力調査によると、同年5月の完全失業率は前年比0.3ポイント上昇して3.1%となりました。
就業者は、「卸売業、小売業」「学術研究、専門・技術サービス業」「教育、学習支援業」「サービス業」などが前年の同月よりも増加しています。
完全失業率とは
完全失業率とは、15歳以上で働く意欲がある「労働力人口」のうち、職がなく求職活動を行っている「完全失業者」の割合を示す数値です。
調査の対象となる10万人は無作為に選出され、配布された調査票に記入するという形で調査が行われています。
なお、農業や林業などの季節によって労働のあり方が変化する職種については、季節調整値を使用して統計が行われます。
労働力人口と完全失業者
「労働力人口」は、簡単に言えば「仕事をしている人」「仕事をしていない人」「仕事を探している人」の合計数ということになります。
正社員かアルバイト・パートかなどの就業形態等についての調査項目はありますが、どんな形態にせよ働いている人は労働力人口として扱われます。
ちなみに非労働力人口とは、「仕事をしていない人」「仕事をするつもりのない人」のことです。
定年退職後の人や専業主婦、家事手伝い、アルバイト等をしていない学生などは非労働力人口になります。
そして、就職活動をしてはいるものの就業には至っていない「完全失業者」は、仕事をする意思がある労働力人口のほうに分類されます。もともと就業の意思がない人は当然仕事をしていませんが、このような場合は完全失業者に該当しません。
有効求人倍率とは
募集されている仕事の数を表す「有効求人数」を、仕事を求めている人の数である「有効求職者数」で割った数字が「有効求人倍率」です。
有効求人倍率は、世の中の景気のアップダウンを知る手がかりになります。
例えば、100人分の求人に対して求職者が50人いれば、有効求人倍率は「2」になります。
このように、仕事よりも仕事をしたい人のほうが少なければ、人材を確保できる企業は少なくなることを意味します。
これとは逆に、100人分の求人に対して応募者が200人いれば、有効求人倍率は「0.5」になり、計算上は100人の人が仕事をしたくても仕事に就けないということになってしまいます。
2017年5月の段階の有効求人倍率が「1.49」という事実を見れば、今の日本は「景気がいい」と考えることができるカモ?って言いたいところだけど、この状況を手放しで喜べない事情もあるんだ。
有効求人倍率の高さだけで判断はできない事情とは
企業が募集する求人数を増やすのは景気が上向いている時なので、有効求人倍率が高いのはとても良いことです。
しかし、いくら求人を出していても、肝心の求職者が応募してこなければ人手不足は一向に改善されず、人さえいれば上向く業績も思うようにはいかないでしょう。
実際、求人を出せば人がすぐに集まる人気の職種や業界と、求人を出していても人が集まらない職種や業界に差があるので、有効求人倍率の数字が高いからといって全体が良くなったとは言いきれないわけです。
この状況をはっきりと表しているのが「完全失業率の増加」という事実です。
需要と供給のバランスがうまく合わないままだと、いつもどこかで誰かが困ることになってしまうんだね。
「人手が足りない」と「もっといい条件の仕事を」というすれ違い
統計以来の高水準を記録した有効求人倍率だけを見れば、探せばすぐに求人が見つかる売り手市場。就業者数も雇用者数も軒並み増加し、完全失業者の数は平成29年5月の段階で84か月連続の減少とどれも傾向としては良いものです。
しかし完全失業率はあいにくの増加。これが意味するところは、「より良い条件の仕事を選びたい」という完全失業者の動向です。
求人を選べる状況にあるからこそより良い条件の職種に就きたいと考えるのは自然なことです。そうすると、ステップアップのための転職やかつてのキャリアを生かした再就職も活発化し、女性の社会復帰への意欲も高まるのかもしれません。
人材不足の職種や業界が敬遠される原因をしっかりと突き止めて労働環境や条件の改善などが進めば、人材がもっとバランス良く集まるようになって完全失業率が減るカモしれないね。
実際そのような動きを見せている企業もあるから、転職にあたっては視野を広げていろいろな選択肢を考慮に入れてみるといいカモね。