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介護士が考える「老老?認認?老老孫?誰が担う?在宅介護」

老老介護について

誰が自宅で介護するのか。

そこに多くの問題が生まれています。

厚生労働省が公表した「国民生活基礎調査(6/27)」について、老老介護という言葉が少し話題になりました。

ここでは、介護業界で働くカモから見た「超高齢社会の日本の在宅介護」についてお話します。

老老介護

増える高齢者世帯。その現実とは

現在の日本を表現する言葉として「高齢者社会」と言う言葉が良くメディアに登場します。実際にどれくらいの数の高齢の方が暮らしているのでしょうか。

平成27年度内閣府の調査によると、65歳以上の高齢の方のいる世帯は平成26年現在、2,357万世帯を越えます。この世帯数は日本国内の全ての世帯のうち46・7%を占めています。実に半数近くになるのです。

※参照:内閣府「高齢者の家族と世帯」

そんな65歳以上の方の暮らしにはひとつのキーワード「老老介護」という言葉が潜んでいます。今回はこの高齢の方の暮らしを示す「老老介護」について解説していきます。そこには世代を越えた根深い問題が絡んでいます。

高齢者介護は誰が担う?老老介護とは

老老介護とは…老人が老人の介護を行っている」状態を表す言葉

内閣府が65歳以上の高齢の方がどなたと暮らしているかを平成26年に調査したものを見てみると、夫婦のみの世帯が一番多く30.7%となっています。次に多いのは高齢の方の一人暮らし世帯で25.3%となっています。夫婦世帯、一人暮らし世帯を合計すると55%と半数を超えてしまうのです。

平成26年から34年さかのぼる昭和55年の世帯割合は、夫婦のみが16.2%、一人暮らしは10.7%と、合計しても26%程度でした。平成26年の数字と比較すると1/2以下。高齢の方を取り巻く環境がいかに激変しているかがわかるカモ。

夫婦のみの世帯や一人暮らしの世帯の増加の背景には「核家族化」があります。高齢の方の息子、娘となる子世代との同居数は減少の一途です。

マンション暮らしの増加、お子さんやお孫さん世代との生活リズムの違い、食生活の好みの違い、お子さん世代の夫婦共働きの増加等の要因がそこにはあります。高齢の方が自分のペースで暮らしやすいとは言いにくい環境となっているのが現状です。

高齢の方が口を揃えてお話するのは「子どもに迷惑をかけたくない」というものです。自分が子どもの足手まといになりたくない。自分でやれる間は子どもであっても手は借りたくない。そんな言葉を多くの高齢の方から直接聴きました。

介護者も病気や障害があったら?認認介護とは

高齢のご夫婦のみで暮らしている場合、もしご夫婦共に病気や障害を持つことになったら?そのご夫婦の暮らしは大変カモ…

認認介護とは?

「認認介護」の「認」は「認知症」を示しています。つまりご夫婦共に認知症を持ちながら二人暮らしをしている状態を指しています。さらにそこから意味を広げてご夫婦共に認知症以外の病気や障害を持った状態での暮らしをも表しています。

これまでは、様々な理由で夫婦のみの世帯が多く、それが「老老介護」に繋がっているという話をしました。
そして、「老老介護」が深刻化すると、その延長線上に出てくる問題が「認認介護」です。

「介護される側」という言葉を聞いて「病気や障害を持つ人」をイメージする方は多いでしょう。そして、「介護する側」は「健康状態が良い」事が必要だと一般的に考えられています。

しかし、現実には、高齢ご夫婦のみの世帯の場合、介護される側が65歳以上であるなら、介護者である配偶者も65歳以上であることが多いです。高齢であると言うことは、病気や障害のリスクも高くなると言えます。

介護する側が病気や障害を持つことで一番先に問題となるのが「介護がきちんと行える?」ということです。介護される側の異変の発見が遅れる、体調緊急時の対応がうまく出来ない等、緊急時の対応も、この問題に含まれます。

急変の危険性を抑えるためには、介護される側の定期的な通院等は欠かせません。日々健康管理が行えるのか、そもそも食事の支度、排泄、洗濯、掃除等日常生活がきちんと営めるのかという部分も、きちんと考慮する必要が出てきます。コンロやストーブの火の管理は大丈夫か、悪徳業者の詐欺に合わないか等、問題は山積です。介護する側に病気や障害がない場合に比べて介護への不安度はより高まります。

視線を「介護する側」へ移すとどうでしょう。
介護する側に「病気や障害がある場合」は「ない場合に比べて、介護への負担はより大きなものとなっていきます。介護される人の身体を起こしたり、車いすを押す等の力仕事や服薬管理、食事の支度…介護する人の障害等の状態にもよりますが、より長い時間、多くの手間暇を必要とすることでしょう。

介護する人ご本人の治療、通院を行う間、介護される人の世話を誰が行うのかと言う問題も出てきます。介護する人の体調急変時への備えも重要です。介護する人が、自分のことより介護される方のことを優先してしまうと介護する人の病気の悪化の発見が遅れてしまうことにも注意が必要となります。

実際カモの体験したことですが、訪問先で、利用者のご主人の体調がとても悪そうだったので、お話を伺いました。すると利用者である認知症の奥様から「いつもこの薬を飲むと身体が楽になるから」と勧められて、奥様用のお薬を飲んだと言うのです。

カモがそのお薬を確認すると、そのお薬は奥様の持病の治療薬でした。カモはすぐに訪問看護に連絡し対応をとり事なきを得ました。奥様にはもちろん悪気はありません。ご主人のことが心配の一心からの行動でした。ご主人も軽度の認知症があったことが今回のことを招いてしまいました。

高齢のご夫婦が共に病気や障害を持ち、お二人暮らしの継続が困難となった場合、だれがこのご夫婦のフォローを行っていけばよいのでしょうか。ご夫婦の息子さん、娘さんが行えば良いのでは?と一般的には考えてしまいます。ですが、ことはそう簡単ではないようです。次はこの点を「老老孫介護」という言葉と共にスポットを当ててお伝えして行きます。

広がる介護者の世代 老老孫介護とは

高齢のご夫婦共に介護が必要となった時、ご夫婦の娘さん、息子さん、またその配偶者の方が介護を行うことは今でも珍しくありません。親の介護を行うために会社を辞めて介護に専念する「介護離職」が大きな社会問題となっています。

そして今や娘さん、息子さん世代だけなく、もうひとつ世代が下がってお孫さん世代も介護に参加する「老老孫介護」も登場しています。若年層であるお孫さん世代が主な介護者になることで生じる問題点とはどんなものでしょうか。

平成25年厚生労働省・国民生活基礎調査よると介護が必要な高齢の方と同居している方では女性が68,7%、男性31,3%となっています。さらこの内訳を見てみると、40歳未満が男女とも2%、40~49歳では女性8,1%、男性7,6%という結果になっています。男女とも2%と一見すると小さな数字のように見えますが、そこには大きな問題が含まれています。

40歳未満までの年齢と言えば、大学等を修了し社会に出てお孫さんご自身のこれからの生活の基礎を作る大事な時期です。その時期に介護に専念、もしくはそれに近い状態の生活を送ることでお孫さん自身がキャリアを積むタイミングを逃してしまう危険があります。

大学なりを卒業されてもお孫さん以外に介護者がいないため就職をせず、介護に専念した場合を考えてみましょう。本来ならば新卒として新しい仕事を覚えて行く時間がそのお孫さんにとっては空白の期間となってしまいます。

数年後お孫さんが働けるようになって就職活動を行ったとしましょう。会社によっては介護に専念していた期間を全く評価せず、「無職期間」とするところも珍しくありません。なぜなら業務に必要なパソコンや専門知識のスキルは新卒と変わりが無い状態でありながら、年齢は新卒よりも高くなってしまうからです。

介護に専念されていた時間を評価してくださる企業も必ずいると思いますが、再就職については難しい面があるようです。結果介護を終えた後のお孫さんのキャリアプランが立てにくくなるという課題が生じてしまいます。

老老介護には認認介護、さらにお孫さんも参加する老老孫介護と多くの暮らしの形があります。介護を受ける人、介護をする人達を支える仕組みにはどんなものがあるのかを次にお伝えして行きましょう。

老老介護を支えるために今、出来ること

老老介護をされている方がたは「問題ないから」「生活に慣れているから」とご本人達だけで生活を完結させてしまい、第三者がそこに加わることを良しとしない場合が多いです。

しかし、老老介護成功のポイントは介護者一人で抱え込まないことが何より大事なのです。第三者の手を借り、違う視点が入ることで介護を受ける方の変化にいち早く気が付けるようになります。介護する方の介護負担を減らすことも出来るでしょう。

介護保険では、複数の福祉サービスを組み合わせることが出来ます。ホームヘルプ、デイサービス、訪問看護、ショートステイ等です。

ホームヘルパーに掃除や洗濯、買い物を頼み、デイサービスで介護を受ける人のお風呂や運動をお願いします。訪問看護が健康チェックをし、介護する人がお休みできるようにショートステイをご利用頂く。ケアマネージャーがご夫婦の希望をお聞きして使用できる福祉サービスの組み立てを行っていきます。

お住まいの市町村の福祉窓口のケースワーカー、病院の医療ソーシャルワーカー、社会福祉協議会と言った「相談支援機関」と言われる窓口にいる人達に相談するのもサービス活用の第1歩です。

入院して手術することになったが費用が高額となった場合の医療費の補助制度の情報や、地域のボランティアグループの活用のアドバイスを受けることも出来ます。安価なお弁当の配達、庭木の整理、障子の張り替え、タンスを動かす等ボランティアは有償のものもありますが、介護保険では行うことが出来ない内容のサービスを請け負ってくれたりします。

民間企業の福祉的なサービスも充実してきています。スーパーやコンビニエンスストアでは電話やインターネットで注文を行い、自宅まで運んでくれます。以前の御用聞きのようです。

毎日配達してくれる牛乳や乳飲料の配達員の方が配達しながらお住まいの方の安否確認をしてくださる見守りサービスをしてくださったりもします。

最近は高齢の方もインターネットを使いこなす方が増えています。インターネットを利用して同じくご家庭で介護を受けている、されている方同士の交流をしてみるのもいいかもしれません。

SNS等の活用すれば同じ在宅介護の境遇の仲間が見つけることが出来て、制度や福祉サービスの情報を交換したり、愚痴をこぼせる場を見つけるが出来ます。在宅介護で一番怖いのは孤独、孤立です。

インターネットのような道具を使って人の輪を広げて行くのが良いカモ。

老老介護、認認介護というと新聞などでは「事故を起こしたらどうする?」とか「孤独な老人が二人で暮らしている」というようなネガティブなイメージの報道をされてしまうことが多々あります。

でもほんとにネガティブなことばかりなのでしょうか?最後に「自宅で暮らすこと」についてお伝えして行きましょう。

在宅介護は悪いことばかりじゃないカモ

カモは在宅介護のお仕事が長くさせて頂いているけど、「老老介護は悪いことばかりじゃない」と感じているカモ。ご利用者が何十年と住み慣れた家や地域で暮らせることはとてもすばらしいです。

たとえば、在宅の場合、家中のあらゆることを把握できている故の安心が存在します。
ある訪問介護の現場では、利用者の方は、かなり目が悪いはずなのに、私が調理中に見つけられなかったお塩を、すぐ出してくださりました。

別の現場でも、利用者ご本人が、室内をどこまで歩けば、手すり等掴まる事ができるのかという事を熟知されていました。ホームヘルパーからは散らかっている部屋でも、ご自宅だからこその感覚的なものが、そこには存在するのです。

他にも、ご近所の方はご利用者が「認知症」だとわかっていても、知らんぷりして「これ食べてよ」と煮物を持ってこられます。人の暖かさを感じたのと同時に、そういった環境は在宅だからこそのメリットだとも感じたカモ。
ご夫婦二人暮らしの場合、何十年も一緒に暮らす夫婦の機微はまさに「阿吽の呼吸」です。傍目にも会話になっているのかわからない「ああ」とか「そうそう」の会話だけでかなりの情報量がやり取りされており、かなり関心したカモ。

ご夫婦それぞれご自分のペースで生活出来ることは在宅生活のよさだと思うカモ。在宅だ、入所施設だと決め付けるのではなく生活されるご利用者自身が在宅か、入所施設どちらが良いか選択出来るように環境を整えてあげることが重要だと思うカモ。

人生の最期の時を自宅で迎えたいという人が増えています。病院や入所施設ではなく自宅での看取りを希望する人の希望を叶えるためにご利用者の重症化する病気や医療的ケアの負担を軽減していく努力は老老介護の問題解決の一助となるカモ。
精神的引きこもりにならないようにみんなで支えていくことが大事なポイントカモ。ひとりぽっちでは寂しいカモ。