介護報酬って?
介護保険制度を利用して事業所がデイサービスやホームヘルパーなどのサービスを提供した時に受け取る報酬金のこと。
介護報酬は事業所の収入の大部分を占めている、まさに生命線。介護報酬の財源は1割をご利用者が負担、残りは税金が投入されています。つまり、介護事業所の収入は国のさじ加減ひとつで変わってしまうのです。
引き下げ議論が起こる背景とは?
介護保険でサービスを提供する事業者へ介護報酬は支払われます。その財源の9割は税金です。介護保険が開始された2000年4月には約2165万人だったのご利用者数は、2017年8月末現在では3462万人にもなっています。そのため介護報酬の支払い額も増加の一途です。
国は増加し続ける介護保険の費用をなんとか抑え、介護サービスの安定と継続を図ろうとしています。そのために国民から徴収している介護保険料の値上がりにも踏み切りました。
さらに介護保険事業者への支払いである介護報酬の内容にも切り込んできました。そして中小企業と比較して訪問介護の利益率が高いことに着目し、介護報酬の引き下げ議論へとつながってきたのです。
介護費用が国の予算を圧迫している事実があり、何か対策を行わなければという国の考えは理解出来ます。では引き下げが行われると現場ではどんなことが起こるのでしょうか?
介護現場に与える影響は?
事業所の減収
収益源を介護保険に頼る介護事業所にとって、介護報酬の引き下げはそのまま収入の減少につながります。収入が減少すれば当然事業所の運営は難しくなり、そこで働くスタッフの労働環境も不安定となっていきます。最終的にはご利用者へのサービス低下となりかねません。
介護スタッフの給与が上がらない
現場で働く介護スタッフの給与も介護報酬から支払われています。引き下げが起これば昇給も難しくなってしまいます。介護スタッフの給与は全産業の平均より低く、そのことが介護スタッフの不足を引き起こす原因のひとつとなっています。介護報酬の引き下げはこうした人材不足の事態をさらに悪化させてしまう恐れがあります。
サービス低下への不安
介護報酬の引き下げとともに、調理や掃除、洗濯などを行う生活支援分野に変更が加えられます。これまで生活支援分野を担当するには、初任者研修などを修了しなければなりませんでした。その資格要件を除外することとなったのです。介護スタッフの資格要件を変更することで学生や主婦など広く介護に関わってもらうことを狙っています。
ですがサービスを提供する相手は介護が必要な方です。介護に関する知識や技術が必要なのは生活支援も身体介護も変わりません。そのため、資格要件を変更して適切なサービスを提供できるのかということも問題視されています。また無資格のスタッフだからといって安い時給設定では、そもそも人が集まらないのでは?との心配も起きています。
※参照:介護予防・日常生活支援総合事業おける基準緩和サービスについて
業界の反応は?
国の介護報酬の引き下げの方針に対しては事業者だけでなく、看護やリハビリ、家族の会など12もの団体が反対の声を上げ、署名活動を行っています。これまでもこうした反対署名は行われてきましたが、ここまで広い分野の団体の足並みが揃うのは初めてのこと。
そこには2014年の介護保険改定時、国が述べた「介護全団体が動かないと反対の声は聞き入れない」との考えが強く影響しています。この声は国にどう響いたのでしょうか…
※参照:介護報酬プラス改定へ署名活動 12団体が賛同、初の団結
介護報酬について、国や業界団体を巻き込んだ大きな議論となっています。現場で働いている介護スタッフはこうした動きにどんな思いを抱いているのでしょうか。
現場は常に受け身でしかない
現場で働いていると「介護報酬の引き下げ」「人員基準の緩和」のニュースは否応なく耳に入ってきます。そのたびに「給料が減っちゃうのかな?」「基準が緩和したら新しい人来てくれるかな?」と言った不安や期待が入り交じった会話が交わされることになります。
介護保険の変更に対して現場スタッフは、常に受け身でしかありません。「新しい制度が追加になりました」「これまでの制度が変更になります」・・スタッフはそれに合わせて動くしかないのが現実なのです。
そして更に受け身なのが、ご利用者です。制度の変更でこれまでは提供出来ていたサービスに変更が出てしまうこと、ご利用料金が上昇する場合もあります。事業所から「この内容で介護を提供します」と言われても従うしかないのです。断ればサービスは受けられない…。