転職活動をすれば誰でも今よりも待遇のいい企業へ転職できるのであれば、もっと多くの人が転職をするでしょう。しかし、実際には時間や労力がかかった挙句に失敗に終わることもあります。
もちろん、誰でも転職できるということはありませんが、準備や備えをしておくことでその成功率は大きく変わります。
早く準備を始めるといっても、転職を考えてもいないうちから準備することは出来ないと思いますよね。しかし、具体的に転職を考える前であっても、転職を想定して準備をおこなうことが可能です。それをエア転職と言います。
今回は後の転職に役立つエア転職について解説していきます。
エア転職とは?
エアギターというのを聞いたことがあるでしょうか。実際にはギターを使わずに、持っているかのようにパフォーマンスをおこなうことで、弾き真似とも言われます。
エア転職における「エア」も同じような意味で使われます。実際に転職するわけではないのですが、転職活動と同じ準備をおこなうことを指してエア転職と呼びます。
本腰を入れて転職活動をおこなうのは、転職を決意してからになりますが、これまで転職について考えた経験がない人にとっては、一歩踏み出すのも手間です。
そのタイミングで仕事が忙しく時間が取れないために転職を断念せざるを得ない、ということが無いように事前にできる準備はしておきたいですよね。
・前もって出来る準備はある
準備の中には、やることやスケジュールが決まってからしか出来ないものと、もっと早くから取り掛かれるものがあります。身近な例で旅行に行く場合を考えてみましょう。
持ち物の準備やホテルの予約はいつでもできるわけではありません。北海道に行くならスキーやスノーボード、沖縄に行くなら水着のように持っていくものがまるで違うからです。
服装にしても、季節によって着るものが変わりますし、何泊できるかによって持っていく量も変わりますよね。そのため、行く場所やスケジュールが決まらないことには準備ができません。
反対にもっと早いうちから準備することもあります。
- 旅行資金の積み立て
- 行きたい旅行先のピックアップ
もちろん、お金に余裕があれば資金を積み立てる必要はありませんし、どこに旅行に行くかもすぐに決められるのであれば前もってピックアップする必要もないかもしれません。
しかし、前もって準備をしておくことで、急に休みが取れたときに、「今月は出費が多くて厳しい」、「計画するのが面倒だ」とならずに行動に移すことかでき、せっかくのチャンスを逃さずにすみます。それでは、転職に関して前もってできる準備を具体的に見ていきましょう。
まあ、そんなことはめったにないと思うけど、何があるかわからないこのご時世、備えあれば憂いなしだね。
エア転職でおこなうべき手順
転職活動と同じことをやるのがエア転職だと書きましたが、内定をもらって退職願いを出すまでやるわけではありません。具体的にはどのようなことをすればいいのか紹介します。
エア転職の流れ
- キャリアの棚卸し
- 職務経歴書の作成
- 求人情報のチェック
- 自分の現在地の確認
自分のキャリアの棚卸し
まず最初にすべきなのは、キャリアの棚卸しです。これまでにどんな仕事をやってきたのか、そこでどのような実績をあげたのか、その結果どういったスキルが身についているのかを整理します。
1年目や2年目であれば、転職を決意してからでもすぐに書けますが、年数が多くなるとそうはいきません。企業によっては半年や1年の単位で業務内容が変わることもあるため、必要になったときに全てを思い出せばいいと考えていると漏れが生じてしまいます。
さらに、本当に自分のやりたい仕事、現状での不満なども定期的に考えてみるのをおすすめします。
就職するときは自分のやりたいことができる企業だと思って選んでいても、業務内容が変わる中でズレてきているかもしれません。反対に、自分の希望と違う部署に配置されたと思っていても、仕事をしていくなかで考え方が変化したために、合致するようになるかもしれません。
もちろん、やりたい仕事でなければすぐに転職という話ではありませんが、
- 自分のやりたいことは一貫しているのに、実際の業務はどんどんかけ離れていっているのであれば転職や異動を考える
- 現状では合致していないが、自分のやりたいこと自体がころころ変わっているのであればもう少し今の企業で働き続けよう
といった目安にはなります。
現状の不満であればすぐに挙げられるから必要ないと思うかもしれませんが、これも定期的に現状を整理しておくことで転職の大きな材料になります。
不満として多いのが、給与が安い、残業が多いなどですが、これらは状況によって変わるはずです。
- 収入が少ない→昇進による収入アップ
- 残業が多い→繁忙期以外はどうなのか?
常に不満だと感じているものは一時的なものではなく、転職や異動によって環境を変えないと解決しない可能性が高いです。
また、定期的に現状を整理して毎回挙がる項目は、自分が重要視しているものであることが多いため、転職先を絞るときの条件として使うことができるのです。
職務経歴書の作成
履歴書は就職活動のときに書いたことがあると思いますが、転職経験が無い人にとって職務経歴書は馴染みがないでしょう。
職務経歴書は、どの企業に在籍していたかだけではなく、どのような業務を行ってきたかを詳しく書いたもので、書類選考や面接のときに使用されます。
いきなり職務経歴書を作成するとなると難しいため、まずはキャリアの棚卸しをおこなってからにするのがいいでしょう。
キャリアの棚卸しがこれまでに得たスキルや経験を洗い出す作業だとすれば、そこからアピールするポイントを選ぶ作業が職務経歴書の作成だと言えるかもしれません。
職務経歴書に書いた内容は面接でも聞かれるため、選ぶ基準としては
- 大きな功績
- 自分が大きく成長した経験
など、強みとしてアピールしやすいものを選ぶことになりますが、何よりも重要なのは面接を受ける企業がどういった人材を欲しがっているかです。
自分では小さな経験だと感じていることでも、必要とする企業にとっては大きなアピールポイントになることがありますし、その反対もあります。キャリアの棚卸しで洗い出した中から、応募する企業によって書く内容変える必要があるのです。
・具体的な企業イメージを持ってそれにあったアピールを考えてみよう!
職務経歴書を書くことで、これまでに自分が経験したことの中から、どういった強みを持っているかを見つけることができます。
そして、自分が転職を考えている企業に対して出すことを意識してアピールポイントを選ぶ作業をおこなえば、その企業、あるいはその業界がどのようなスキルを求めているかを考えるきっかけにもなります。
たとえすぐに転職をしないにしても、その業界での転職を成功させるためには今後どういったスキルを磨いていけばいいかも見えてくるでしょう。職務経歴書については定期的にとは言いませんが、興味のある企業や業界に変化があったときには作成しなおしてみるといいでしょう。
求人情報のチェック
転職サイトには多くの求人情報が掲載されています。やりたい職種や興味のある業種があればそれらについて、まだ無いのであれば今自分の職種や業種についての求人情報をチェックしてみましょう。
就職活動のときに受けた企業や、名前の知っている企業の求人があると気になるとは思いますが、どの企業が求人を出しているかよりも
- どのくらいの数の求人があるか
- どんな待遇や条件での募集か
を見るようにしてください。
どのくらいの数の求人があるかを見れば、その職種が不足しているのか、その業種が盛り上がっているのかが見えてきます。これも一度調べただけでは、その瞬間での求人が分かるだけですが、定期的におこなうことで業界の動向が見えます。
一度見たときには少なかったとしても、調べる度に求人が増えていったとしたら、需要が増えて転職に有利な状態になっていることが分かります。反対に少ないままだったり、減っていっているのであれば、厳しい状況にあることを認識すべきでしょう。
自分の現在地の確認
求人情報にある待遇や条件を現在の自分と比較することで、同年代や同じ職種における現在地を知ることができます。
現状よりも給与が高く待遇のいい求人が多くあるのであれば、正当に評価されていないのかもしれませんし、自分の実力不足という可能性もあります。反対に、求人に対して現状のほうがいいのであれば、高く評価されているという自信にもなるはずです。
そして、求人情報のチェックにおいて一番需要なのが条件です。求人のある多くの企業が同じ資格やスキルを条件に挙げているのであれば、その職種における必須スキルだと考えておいたほうがいいでしょう。
もし、級などのように何段階かある資格であれば、条件とされているものの上位の資格を持っていれば、強みと考えることもできます。
なかには資格などではない
- チームリーダー経験
- 海外での勤務経験
といった業務における経験が条件となることもあります。自分の年齢であれば、どのような経験が求められているのかを知る目安となりますよね。
さらに、自分の職場でのチームリーダーの年齢や海外勤務状況と比較することで、
- マネジメント能力のスキルアップに力を入れてくれているか
- 海外での経験や語学習得を後押ししてくれているか
といった企業の育成方針も想像することもできます。
エア転職のメリットと注意点
エア転職の手順について見たところで、エア転職をおこなうメリットと、覚えておいてほしい注意点を紹介します。
転職を決意したときにすぐ足を踏み出せる
もともとの目的が転職活動の準備であるわけですから、一番のメリットはすぐに動ける状態になることです。
仕事が忙しくて転職活動の時間が取れないと転職を断念するかもしれないと書きましたが、忙しくなくても足を踏み出しやすいわけではありません。そう感じる原因には、転職に対する不安もありますが、準備にかかる手間もあるはずです。
キャリアの棚卸しに始まり、職務経歴書の作成、転職先企業の調査など、やったことが無ければどの程度の時間がかかるのかも分かりませんよね。
しかし、2年に1回程度でも職務経歴書を書いておけば、多くても直近の2年分だけ追記すれば完成することができるため、その分だけ求人情報のチェックなどに時間を使うことができるでしょう。
転職への不安が全く無くなるというのはありませんが、準備に使える時間が増えることで軽くすることはできるはずです。
アピールポイントを探す能力は社内での昇進にも効果あり
普段の仕事ぶりを見ている上司が評価するのに対して、これまで会ったこともない面接官が評価するという違いはありますが、自分のスキルや実績のアピールが必要であることに違いはありません。
そんなに仕事ができるわけではないのに、アピール上手なために昇進していく人などは分かりやすい例ですよね。黙々と仕事をやっていれば正しく評価されるならいいですが、なかなかそうはいきません。
下記のような様々な理由により、正しい評価を得るためには、多少のアピールは必要です。
- 1人の上司が評価する部下の数が多い
- 上司自体がプレイングマネージャーで管理能力が高くない
- 期初の目標設定があいまいで、正確な評価ができない
売り上げや契約件数のように数値で成果が見れるものはいいですが、業務効率を改善するための取り組みのように成果がイメージしずらいものもあります。
そういった時は、具体的な数値を交えて伝えることにより、評価する側の印象は大きく変わります。
これでみんなが少し楽になります。
この改善によって、1時間かかっていた作業が10分に減らせるため、1ヶ月あたりでは何十時間の工数削減ができるようになりました。
評価面談にしても上司への報告にしても、自分のやったことや細かい数字の全てを伝える時間はありません。
職務経歴書などを書くなかで、自身の成果や実績を短く的確に伝えるという能力を磨くことは社内での昇進にも有効です。
転職する気がまだない状態で面接を受けてしまうと企業側にも迷惑がかかります。
入社1年目から転職にも昇進にも効果的なエア転職を習慣付けよう
いつでもできると書いたように、エア転職をおこなうために、「何歳以上」や「入社何年目以上」といった条件はありません。極端な話、入社1年目であってもできることはあります。それは自分の現在地の確認です。
入社したばかりで転職を考えている職種がある人は少ないでしょうが、今の職種や業種の中で現在地を把握することは出来るはずです。
入社1年目や2年目では転職するとしても第二新卒として扱われるため、求人サイトを見ても求められる条件が書かれていることは少ないです。しかし、わざわざ求人情報を調べなくても、同期や1、2年上の先輩社員のように同じ会社内で比較するだけでも意味があります。
会社の同僚であっても、同じ業界で働く人材であることに変わりはありません。
- 同期に比べて、業界の知識が不足している
- 1年先輩なだけでスキルの幅が広い
- 発想力や分析力は先輩と比べても負けていない
のように自分に足りないものや、さらに伸ばすべきものを知るには十分なはずです。しかも、転職しなかった場合には昇進を争うライバルとなるわけですから、早いうちから準備しておくメリットは大きいでしょう。
出来ることだけでも意味がある
エア転職の手順として紹介した項目のすべてを行うのであれば、それなりに時間が必要です。いつでも可能だと言っても、時間がかかると面倒だと感じてしまいますよね。
しかし、すべての項目をセットでおこなわないと効果がないというわけではありません。
職務経歴書を書くまでの時間は取れなくても、キャリアの棚卸しだけでも意味は大いにあります。何をやってきたかをまとめることが出来ていれば、後は何を書くかを選ぶだけの作業にすることが出来ます。
とはいえ職務経歴書の書き方で戸惑うということはありますので、定期的にはキャリアの棚卸しだけにしたとしても、一度は職務経歴書を書いてみることをおすすめします。
転職情報のチェックだけを定期的に行うというのでも構いません。簡潔に言うならアンテナを高く持つというわけです。
求められるスキルや知識のトレンドが分かれば、今後どのようなスキルを身につけていくべきかが分かります。さらに、業界の盛り上がりがどのような状況かを知っておけば、転職をするタイミングを逃さないはずです。
30歳、40歳の節目をきっかけにエア転職を習慣化しよう
この記事を読んで、試しにエア転職をしてみようと思った人はすぐにでもやってみてください。今まで気づかなかった実績や能力を確認できるチャンスです。
したほうがいいとは思うけど今すぐにはと必要ないと感じた人には「節目の年にやる」と決めてみるのはどうでしょう?
もちろん早くに始めたほうがいいのですが、もし何かきっかけとなるタイミングを探しているのであれば30歳や35歳、40歳といった大きな節目を迎える前がおすすめです。
年齢の節目は将来のことを意識する人が多いです。30歳研修、35歳研修のような育成カリキュラムが組まれている企業があるくらい大事な年齢ともいえます。
そういった研修のなかでエア転職としてではなくても、キャリア形成の一環として、キャリアの棚卸しが組まれていることがあるため、その機会に合わせることでエア転職のきっかけとしやすいです。
そして、何かのきっかけでエア転職を行うことができたら、それで終わりにしないでください。もちろん、一度でもやったことがあるというのは無意味ではありませんが、エア転職の手順として紹介した項目の多くは継続することで効果を発揮します。
そして、定期的に行っていれば、一回にかかる時間や手間は少なくなります。せっかくエア転職をするきっかけがあったのであれば、習慣にするようにしましょう。