仕事に対する考え方は人それぞれですが、社畜とは一体どんな状態の人を言うのでしょうか。
好きなことを仕事にしたいという人もいれば、収入を得るための手段であると割り切っている人もいるでしょう。
いずれにしても、嫌なことが一つも無いという人は少ないはずです。
嫌なことがあれば仕事を投げ出すというのは社会人としてどうかと思いますが、反対に自分を限界まですり減らして仕事を続けるのが正しいかというと疑問です。
今回は、そんな自分をすり減らす働き方として挙げられる社畜について紹介します。
【定義】社畜とはどんな存在?
社畜とは、会社の言いなりなって家畜のように従順に働く人を揶揄することから生まれた造語です。
ひどい扱いをされるということで、ブラック企業などで働き続ける人を指して使われることもあります。
従業員と会社とは、給与をもらう代わりに労働力を提供する関係なのですが、ときには力関係が大きく崩れてしまうこともあります。
雇われる側は力関係上、社畜になりやすい
本来は力関係が同じであるべきではありますが、雇う側と雇われる側ではどうしても雇う側が優位に立つことが多いです。
これは、労働組合などの存在によって正社員の解雇がは簡単にできなくなった現在でも同じです。
「サービス残業を強要される…」
「自分の代わりがいなくて休みが全く取れない…」
といったような、明らかにおかしいところも会社に指摘できず、“社畜”はいいように使われてしまいがちです。
会社にとって社畜は「使い勝手がいい」
雇っている会社からすれば、社畜となっている従業員はメリットが大きい存在かもしれません。
上司から言われたことは反発することなくやってくれる存在ですので、時間的に無理があるようなことでも、サービス残業や家に持ち帰ってでも対応してくれます。
あるいは、面倒な雑用のような仕事でも嫌がることなく引き受けてくれるわけですから、会社や上司からしたら便利な存在と言えるでしょう。
しかし、社畜となっている人の多くは、上司からの指示がなければ動けません。
つまり、自分で物事を判断して仕事をするということは出来ないため、そういう人材ばかりが増えてしまうことは会社の将来を考えるとデメリットにもなります。
同僚にとって社畜は「迷惑な存在」にもなり得る
評価されないような雑用を引き受けてくれる存在であれば、その人に雑用を任せることで、自分たちは評価に繋がるような業務に集中することができます。
それによって業務効率を上げることができ、自分の評価が上がるのであれば便利な存在と言えます。
しかし、自分たちと同じように評価される業務をサービス残業や家でおこなう存在だとしたらどうでしょうか。
社畜と比較され、マイナス評価される可能性もある
サービス残業の場合は残業を申請しないため、勤務時間だけを見れば定時間で業務を終えたことになります。
「なぜ⚪︎⚪︎は定時間で終わっているのに、君たちは終わらないのか」というように比較対象として利用されることがあるのです。
本来は、
「残業代を支払って残業を指示するようにする」
「業務量が適切になるように増員するなどの調整をおこなう」
といった対応を取ることで健全化をはかるべきですが、社畜となっている人物の働き方を基準にされてしまい、職場全体に不利益を与える場合もあるのです。
社畜として働くデメリット
社畜として働き続けるデメリットとして考えられるのは下の4つです。
- 過労によるストレスで病気になる
- 正当な評価が得られなくなる
- 自分の価値が分からなくなり自信喪失に陥る
- 転職市場で評価されにくくなる
では詳しく見ていきましょう。
1.過労によるストレスで病気になる
社畜精神が強いと長時間労働を肯定し、無意識に仕事にのめり込んでしまうことで、肉体的な負担を強くしていってしまいます。
過労に加え睡眠不足もたたり疲労はどんどん蓄積。
慢性的ストレスで心身ともにボロボロ状態になって、鬱病といった精神病にかかってしまうことになるのです。
2.正当な評価が得られなくなる
「大事な会議の前に資料を持ち帰って発表の準備をおこなった」
のように、誰でも仕事の持ち帰りくらい一度はやったことがあると思います。
問題なのは、それを習慣化することです。
常にサービス残業や家に持ち帰って仕事をしていると、それが当然のこととして仕事を振られることになってしまいます。
それだけ頑張っても、社畜と認識されてしまうと正当に評価されることは稀です。
会社や上司からすれば、何を言っても不平不満を言わない便利な人物でしかないため、成果を認めてくれることはないでしょう。
そもそも、正当な評価を考えている上司であれば、サービス残業や業務の持ち帰りを是正するはずですよね。
3.自分の価値が分からなくなり自信喪失に陥る
無茶な働き方を続けていると、自身の持っているスキルや知識、実績に対する価値が分からなくなってしまいます。
指示された仕事をやっているけど、
- やりたい仕事をやっているわけでもない
- 目標を設定して取り組んでいるわけでもない
- 評価に結びつくわけでもない
ため、段々と仕事と評価に対する感覚が麻痺して、自信喪失に陥ってしまうのです。
身を粉にして働いているにも関わらず、周囲からの評価を得られないと感じている方は注意して下さい。
4.他の会社・他業界からも評価されにくくなる
ずっと同じ職場で仕事ができて、上司からの指示通りに従うことで定年まで給与をもらえるのであればそういった働き方もあるのかもしれません。
しかし、運悪く会社が倒産したり、リストラにあったりして転職活動をする場合には大変な苦労をするはずです。
出来ることやアピールポイントを聞かれたときに
「会社や上司の指示に従うこと」
「結果が出るまで長時間労働すること」
としか答えることができない人材を採用する企業は多くありませんよね。
社畜になりやすい人の7つの特徴
会社のために頑張っていれば定年まで働けるという終身雇用が一般的だった日本は、社畜の割合が多いと言われています。
では、社畜には一体どういった性質があるのでしょうか。
以下の7つが社畜になりやすい人の特徴だと言えます。
- 職場に仲のいい同僚がいない
- 言われたことしかやらない
- 残業が当たり前になっている
- 他人からの評価を気にしすぎる
- キャパオーバーの仕事を引き受けてしまう
- 将来像を描いていない
- 挫折に弱い
詳しく解説していきます。
1.職場に仲のいい同僚がいない
社畜の中には、
「自分自身では全く気付かずに社畜となっている人」と、
「今の状況がおかしいことには気付きながら受け入れてしまっている人」
がいます。
双方の状況からなぜ脱することができないかというと、「職場に仲のいい同僚がいない」からです。
自分が社畜かどうかを判断するのは意外と難しい
社畜という明確な定義も無いため、自分の働き方が社畜かどうかを判断するのは意外と難しいのです。
自分では「上司に気に入ってもらうためにちょっと頑張っているだけで、正当に評価をされるはず」と思っていても、周りから見れば便利に扱われているだけということもあります。
反対に、「自分は期待されて難しい仕事を任されている」と思っていても、周りから見れば単に無理な仕事を押し付けられているだけ、ということもあります。
自分自身で正常な判断ができなければ、周りの人の正しい判断に助けてもらう他ないのです。
間違った状況を正常化してくれるような、言い辛いことでもしっかりと指摘してくれる同僚が職場に1人でもいれば、自分が社畜になりかけていないか、気付くことができるはずです。
2.言われたことしかやらない
3.残業が当たり前になっている
4.他人からの評価を気にしすぎる
評価と言っても、半期や年度ごとにおこなわれる人事評価ではありません。
人事評価は、その結果によって昇給や昇進に繋がりますので、大いに気にするべきですし、結果が悪ければ反省もするべきです。
ここで言う評価とは、1つ1つの細かい言動や行動に対して相手がどう思うかということです。
もちろん、全く気にしないというのは空気が読めない人と言われるかもしれませんが、必要以上に気にしすぎると正しい行動が取れなくなります。
5.キャパオーバーの仕事を引き受けてしまう
例えば、チームで仕事をしていれば、「ちょっとこの仕事手伝ってくれない?」と飛び込みの仕事を頼まれることもあるでしょう。
このとき、口には出さなくても「もし、手が空いてるなら」という軽い気持ちで頼んでいることが多いですよね。
本当に手が空いてるなら手伝ってあげればいいのですが、自分が抱えている仕事の状況も考えなければいけません。
自分の仕事も納期が迫っているならば、「今日中に終わらせなければいけない仕事があるため、今は時間取れそうにないです」と断ることも大事です。
あるいは上司からの頼みであれば、「別の仕事に影響しそうですが、どちらを優先させましょうか」と指示を仰ぐこともできます。
「断れない」「頼めない」「相談できない」人は注意
なんでもかんでも断れというのではありません。
持ちつ持たれつという言葉もあるように、たまには少し無理をして手伝ってあげることで、自分が困ったときには手伝ってもらうという関係性なら何の問題もありません。
仕事を頼まれたら嫌だろうなとも考えて
- 自分が忙しくても頼まれると断れない
- 手の空いてそうな人がいても頼めない
- 飛び込みの仕事に対応したために、業務が遅れそうだと上司に相談することもできない
となってしまいがちな人は要注意です。
全て自分で抱え込むようになってしまうので気をつけましょう。
6.将来像を描いていない
数年後にどうなっていたいか、そのためには今何をしないといけないかという具体的なイメージが出来ていない人は社畜になりやすいと言えます。
将来像が描けているのであれば、社畜のような働き方をすることの全てが悪いとは言えません。
ただし、将来像を描くとともに、期間も決めておく必要があります。
一番分かりやすいのが新入社員です。
入ったばかりの新人に「上司や会社の言いなりになるな」、「雑用を進んでやるな」というのはなんか違いますよね。
- 仕事のやり方を覚えるために指示されたことを必死にこなす
- 名前を覚えてもらうために飲み会の幹事なども積極的にする
なんてことは良くある話ですし、これを社畜だという人は少ないでしょう。
具体的な将来像を描けていれば、そのような下積みをいつまで続けて、次のステップに進むべきかも考えているはずですので、描いていたイメージからずれていれば気付くこともできます。
将来像が無く期限を設定できていないと、ずれているかどうかも判断できませんし、今の働き方に対して疑問に思うこともないでしょう。
その結果、会社や上司の言うことに従うことが自分の仕事だと考えるようになる危険性があるのです。
7.挫折に弱い
今の働き方がおかしいと思いながらも受け入れている人に多いのが、挫折から立ち直ることが苦手という特徴です。
挫折から立ち直れずに、自信を失くしてしまい、「自分はこんなことしかできない」という考えを持ってしまうことです。
仕事をしていれば失敗はいくらでもあります。
「業務で多額の損失を出してしまった…」
「取引先の気を損ねて大きな商談を逃してしまった…」
と、大きな失敗によって挫折をすることもあるでしょう。
大切なのは、その失敗から何かを学び、挫折から立ち直れるかどうかです。
もちろん、本人の問題だけというわけではなく、失敗をカバーする体制や再び挑戦するチャンスを与える風土など、会社の環境によるものも影響します。
一度の失敗を長々と咎め、チャンスを与えないような会社は社畜を生みやすい企業と言えるかもしれません。
いずれにしても、失敗を引きずったままではいつまでもいい仕事ができません。
失敗しないように準備することは大切ですが、「失敗してらそこから学べばいい」、それで次からチャンスを与えないような企業なら「転職すればいい」くらいの余裕のある考えを持っておくのもいいでしょう。
【脱社畜】社畜にならないための対策・予防方法
望んで社畜になりたいという人はいません。
知らず知らずのうちに社畜という働き方をしていたり、抜け出せずに諦めてしまったりしているわけです。
もし、社畜にならないためにで出来ることがあるなら知っておきたいですよね。
客観的に見てくれる人をつくる
社畜かどうかを自分で気付くのは難しいため、自分のことを客観的に見てくれる存在を作っておくというのはかなり有効です。
相談できる同僚をつくっておく
“職場内の同僚”であれば、いつも近くで仕事ぶりを見ているため、自分の働き方がどうかを判断する存在としては一番適任なのは間違いありません。
それ以外にも
「違う職場に配属された同期」
「同じ業界に就職した大学の同級生」
とも定期的に仕事の話をするようにしておくと、気付いてくれる存在となってくれることがあります。
同年代の働き方なども聞くことができるため、社畜になるのを防ぐという目的以外にも、切磋琢磨して高め合う刺激となってくれます。
家族にも相談する
そして、仕事ぶりを見ることは出来ませんが、もっとも身近な家族の存在も忘れてはいけません。
「上司が無理な仕事を振ってきてさ」
「こんな働き方っていいのかな…」
と、それとなく家族に話してみましょう。
また、実家暮らしであれば両親、結婚していれば配偶者になるわけですが、毎日一緒に生活をしていれば、あなたの客観的な仕事ぶりや毎日の変化に気付きやすくなります。
表情のチェックを欠かさずに行う
一人暮らしで、仕事の話の出来る友人も少ないという場合でも簡単にできるのが表情のチェックです。
仕事を楽しめているかどうかは表情にも現れます。
もちろん、仕事中に自分の表情をずっと見ているわけには行きませんが、昼休みやトイレに行ったときに鏡を見るくらいはできますよね。
朝会社に行く前や家に帰ってきたときに鏡で自分の顔を見るようにするだけでも、変化に気付きやすくなるはずです。
この方法は簡単に行えるのですが、仕事を楽しんでいる場合は気付くことはできません。
社畜であっても、その仕事が楽しいのであれば構わないですが、転職などを含めた将来のキャリアを考えたときには不安です。
もし、仕事は楽しくて仕方ないのだけど社畜になっていないかを確認したいという場合には、次に紹介するキャリアの棚卸しを試してみてください。
キャリアの棚卸しをする
自分が社畜であると気付いていない場合にも、気付いた上で諦めてしまっている場合にも、ぜひともやってほしいのがキャリアの棚卸しです。
- 自分がこれまでどんな実績を上げているか
- どのようなスキルを身に付けているか
を棚卸しすることで、「社畜化」を防ぐことも、「脱社畜」することにも役立ちます。
社畜と気づかず仕事を楽しんでいる場合
まず、社畜になっていることに気付かずに仕事を楽しんでいる場合です。
こういう人は意外に少なくありません。
仕事とプライベートのうち、仕事にウェイトが傾きすぎて、ワーカホリック状態になってしまう人です。
毎日いろいろな仕事を頼まれて忙しくしていると、いわゆる“ランナーズハイ”状態になって、仕事が楽しく「俺はデキる男なんだ」と勘違いしてしまいがちです。
そこでキャリアの棚卸しをしてみると、意外に何の実績も残せていないことに気付く、なんてこともザラではありません。
もしも、実績を残せていて、スキルも身についているのであれば、社畜ではなくいい人材育成を受けていると考えることができますよね。
雑用ばかりの仕事を振られている場合
雑用ばかりしている人が「自分は仕事ができる」と勘違いすることがある一方で、「自分はダメだ」と思っている人でも評価されるべきスキルを持っている可能性も十分にあります。
実績やスキルを棚卸しした結果、
「今の働き方で目に見える結果を出そう」
「もっと自分の成長できる仕事があるはず」
と再確認することができます。
自ら評価されるべき実績やスキルに気付ければ、異動や転職のように社畜から抜け出すチャンスも見えるはずです。
また、転職しないにしても、評価されるべきだという自信を持てれば仕事の取り組み方も変えていけるのではないでしょうか。
まとめ
今回は社畜として働くことのデメリットとともに、社畜になりやすい人の特徴や予防策を紹介しました。
いい機会ですので、自分の働き方をチャックしてみるのもいいでしょう。
社畜から抜け出す方法も少し紹介しましたが、社畜として働いた期間が長ければ長いほど抜け出すことは難しくなってしまいます。
何年も雑用を引き受けていた人が、「これまでは引き受けていましたが、本来私の仕事ではないので受けられません」というのは勇気がいりますよね。
また、上司からの指示に従うことだけを続けていた人が、いきなり自分で考えて評価されるような仕事をおこなえるかと言うと難しいでしょう。
しかし、予防することは難しくありません。
今すぐに自分を客観的に見てくれる仲のいい同僚を作れと言われれば困るかもしれませんが、普段から意識して人と接していれば、時間をかけてそういった同僚を作ることは出来るはずです。
また、鏡を見るだけでおこなえる表情のチェックは本当にいつでもできますよね。
そして、キャリアの棚卸しは、昇進を目指したり転職を考える場合にも必要です。
社畜にならないため仕方なくではなく、自分のステップアップのためと考えて定期的におこなうようにしましょう。