年に一度の社員旅行。言葉だけだとなんだか楽しいイメージですが、旅行とは言っても仕事の延長のような気がして、不参加という方も増えているようです。
社員旅行は主に社員同士の親睦を深めるという目的を持った会社行事のひとつなのですが、中には研修や会議を兼ねた社員旅行もあります。
せっかくの旅行なのに、会社の業務が混じっている旅行となれば話は別です。尚更、気乗りしないというのも仕方がありません。
社員旅行とは?
- 強制参加なのでしょうか?
- 参加の意義とは?
今回はそんな賛否両論のある社員旅行について解説していきます。
参加義務がある社員旅行と義務ではない社員旅行
一口に社員旅行と言っても、
- 日帰り
- 研修を含んだもの
- 費用がかかるもの
- かからないもの
など、その形態は様々です。
その中でも参加を検討する際に一番気になることは、その社員旅行の参加は義務であるのかという点ではないでしょうか。
参加義務がある社員旅行
- 業務時間内に行われる
- 時間外手当や休日出勤手当が支給される
- 休日出勤手当が支給されない場合は代休を取ることが許されている
- 会議や研修の一環として行われる
このような社員旅行は「業務のひとつ」とみなされ、参加する事が義務とされている可能性が高いです。その為、欠席すれば欠勤扱いとなる場合もあるでしょう。
参加義務がない社員旅行
- 業務時間外や休日に行われる
- 社員同士の懇親だけを目的とした社員旅行
これらの社員旅行には参加義務はなく、基本的には自由参加とされている事が多いです。その為欠席をしても、欠勤扱いになる可能性は低いと言われています。
社員旅行不参加のデメリット
参加が義務ではない場合、不参加という選択をする事ができます。
参加をしない場合は、その分の時間や旅先で必要になるはずだったお小遣いを、自分の好きなように使う事ができるというメリットがあります。では不参加の場合、どのようなデメリットがあるか確認してみましょう。
- 費用
- 上司との関係
- 同僚との関係
積立金が無駄になる
会社によっては毎月の給料から社員旅行の積立金を天引きされていることも多いようです。社員旅行を欠席してもこの積立金は返ってこない場合がほとんどです。
上司に適性を見誤られる
上司の中には社員旅行のような仕事と離れた時の立ち振る舞いで、社員の適性を見極めるという人もいます。
もちろん社員旅行を欠席しても、日頃の仕事で自分の適正をアピールできているという場合は問題ないでしょうが、上司は自分が知らない社員の一面を見たいと思っていることも事実です。
参加したくない同僚や部下からのやっかみ
これは人によっては全く気にならないデメリットです。参加が義務ではないのであれば、不参加と決めるのは本人なので本来であれば問題ありません。しかし人の言葉が気になる人にとっては、これはかなりのデメリットかもしれません。
思い切って参加してみるという選択
気は進まないけど、不参加の決心はまだつかない・・という場合は思い切って参加をしてみるという選択も良いと思います。
参加をする前は「時間がもったいない」「気を使うことが面倒」など気が進まない理由がたくさんあると思うのですが、嫌々でもいざ参加してみると「案外楽しかった!」ということは、社員旅行でなくても良くありますよね。
会社では見られない貴重な時間と考えてみては?
社員旅行という非日常な空間を経験することで、自分の見聞も広げられるかもしれませんし、会社ではあまり話すことが無い人や、これまで仕事以外の話をしたことが無い人が、話してみると意外と気が合って仲良くなった、ということも十分に考えられます。
一見ビジネスとは直接関わりが無いように思えますが、ビジネスはいつの時代も人と人との繋がりが重要です。迷っているのであれば、軽い気持ちで参加をしてみませんか。
やっぱり行きたくない!社員旅行をなんとか回避する
年間行事として組み込まれていることも多い社員旅行ですが、果たして参加は義務なのでしょうか。労働基準法の観点から具体的に考えてみましょう。
私たちはあくまで会社との労働契約によって働いています。そのため、会社の指示に従うのは業務時間内のみでよいことになります。労働基準法36条のいわゆる「36(サブロク)協定」という言葉を聞いたことはありませんか?
サブロク協定とは「時間外・休日労働に関する協定届」のことをいいます。労働基準法36条には以下のような記載があります。
労働基準法に定める労働時間の原則は、1日8時間、1週40時間とされていますが、労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、協定で定める範囲内で1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて、労働させることも可能です。
社員旅行は2~3日拘束されることも多いため、厳密に言えば上記に違反していることになります。サブロク協定を会社が結んでいれば、問題はなのでしょうか、ただの行事ごととしている場合は、参加をしなくても労働基準法では問題がありません。
社員旅行のうまい断り方
行かなくてもいいなら断りたい!
そう思ったときに使える社員旅行の断り方についてご紹介します。
断るときのポイントは、「めんどう」や「行きたくない」という雰囲気を出すのはNGです。会社は組織であるため、ある程度の協調性が求められます。そのため、「本当は行きたいんですけど~」という雰囲気で断るのが無難でしょう。
タイミングにも気をつけよう
また、断るタイミングもとても大切です。社内で社員旅行の話が出たあとすぐに断ると、「行きたくないのでは?」と思われる可能性があります。
そうなるとイメージもよくありませんので、タイミングとしては、くわしいスケジュール(日程や行先)の発表がされてからがおすすめです。あくまでも、「行きたくない感」は出さないよう注意しましょう!
当たり前ですが、社員旅行の当日にドタキャンは絶対にNGです。会社としても旅行代金や様々な段取りをしています。場合によってはキャンセル料が発生するなどし、会社に迷惑がかかります。
今後の会社での立場に影響する可能性もあるため、ドタキャンだけはやめておきましょう。
どんな風に断ればいいのか?
断る時は「友人の結婚式と重なっている」という風に断るのが一番角が立たないためおすすめです。
両親や兄弟などの不幸を理由にすると、会社によっては書類の提出を求められたり、「お母さん大丈夫だった?」など後の対応に響いたりする可能性があるため、会社とは関係のない人物の都合で休むようにしましょう。
また、法事を休むための口実にするのもよいでしょう。冠婚葬祭関係は会社よりも優先されるため、納得できる理由といえます。
他には、体の不調を理由にするのも、「無理はさせられないな」と相手に思わせることができるためおすすめです。体の不調としては、以下のような理由もよいでしょう。
- 腰が悪いので長時間座席に座っていられない
- 乗り物酔いが激しい
- 高所恐怖症で…(飛行機で行く場合など)
それにまつわるエピソードなどを織り交ぜて説明すれば、説得力が増します。
知っておきたい社員旅行の知識
社員旅行は社内行事として当たり前のように組み込まれており、なんとなく流れで「参加するもの」というイメージです。しかし、労働基準法で定められているように、親睦を目的としたものであれば特に参加する義務はありません。
社員旅行の費用は条件が揃えば、福利厚生費として経費計上でき、節税になります。しかし社員旅行の費用が毎月の給料から少しづつ天引きされて積み立てられている場合、参加しなかった場合は本来であれば全額返済されるべきと考えるでしょう。
実際に労働基準法24条では給料は全額支払われるべきとの規定があります。しかし、実は社内預金や旅行積立金については「二四協定」というものが存在しており、労働者の過半数の同意があれば控除することが可能となっています。
賃金からの控除については、労働基準法第24条においては、賃金の全額を直接労働者に支払うことが原則とされていますが、その例外として、
- 法令に別段の定めがある場合
- 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合
に限り、賃金から一部の金額を控除することが認められています。
そのため、会社の規定によっては、残念ながら費用が戻ってこない可能性が高いのです。
減少傾向にある社員旅行
社員旅行の本来の目的は「社員同士の親睦を深めて仕事に活を見出す」というような「社員は仲間」「社員は家族」というような風習も元に行われてきたものです。
人材サービスのリクルートキャリアでは、社員旅行によって社員の関係を強固なものにし、チームパフォーマンスを高める効果もあったそうです。
しかし、現代では、社員旅行は「パワハラでは?」という声もあり、実際に社員旅行を行う企業も1990年代には8割だったのに対し現在では5割ほどと減りつつあります。
若い人の意識が変わってきたということもあり、会社の風土などにもよりますが、やはり「参加したくない」と考えている人が大半のようですね。
社員旅行についてみんなに聞いてみた
社員旅行のある会社にお勤めの人に質問してみました。
社員旅行の行き先とどう思うかを教えてください。
社員旅行を公休から消化について(25歳・女性・美容職)
沖縄
私の勤務している会社では社員旅行で毎年沖縄旅行が実施されている。自由参加とは言われているものの不参加の場合は必ず参加できない理由をしっかりと提出しなければならない。
さらには公休から休みが消化されてしまうため参加すると必然的に他の出勤日が連勤となってしまった。
去年の沖縄旅行では店舗ごと班に分かれて行われたが、会社自体が大きいわけではない為社長と行動を共にする形となった。楽しいというよりは始終接待の気持ちを持たなければならなかった。
旅行先での行動も制限
食事の際は全員自己紹介と、今後の抱負なども述べる場が設けられそれを考えるのも一苦労だと感じた。自由時間も少なく時間厳守できなかった社員もいて連帯責任として大勢の前で社長のお叱りを受ける事になったりもした。
社員旅行帰宅後も明日朝から出勤となる為、あまり体調を整える事が出来ず、体調を崩す社員も少なくなかった。
ただ、他店舗の社員と普段交流がもてないため他の店舗との情報交換などする事も可能の為、息抜きの旅行ではないが仕事としてのモチベーションを高めることには繋げれるかと思う。
もちろん、そういった会社ばかりではないかと思うのだがこの会社での社員旅行はもう参加は見送らせていただきたいと感じた。
雑用で疲れる社員旅行はつらい(29歳・女性・事務)
登別温泉
社員旅行はやっぱり仕事の延長だと思うので、強制でなければ参加したくありません。
私の会社は大きく分けて営業と事務に分かれており、事務は女性のみです。事務員は経理事務から雑用までいっしょくたにまとめられています。なので、社内の何でも屋として認識されています。
上司が仕切る旅行なのでゆっくりできない
しかも、事務のトップが社員旅行を仕切るので社員旅行の準備から現地での宴会の手伝い、お土産購入まで手伝わなければなりません。自由時間になると営業など男性は温泉にゆっくり入ったり、周りを散策したり楽しんでいますが、その自由時間が準備時間に割かれてしまいます。
上司は「そんなに手伝ってくれなくていいのよ~。ゆっくりしてて。」などと言ってはいますが、女だけの事務だし、上司が本当はどう思っているかわからないので手伝わないわけにはいきません。
「社員旅行でのんびりしていた」「あの子は気が利かない」などと思われ、にらまれると業務にも支障をきたします。いつもの仕事は8時間勤務ですが、社員旅行中はずっと気を張って過ごさなければならないのでいつもの十倍疲れます。
宴会中も女子社員はお酌をという雰囲気になって、ゆっくり食事もとれません。いつもより労働時間が長い分、残業代を出してほしいという気分です。
こんなところに社員旅行で行けたら嬉しいのにと思う場所(25歳・女性・美容職)
リゾート系の海外
社員旅行は気をつかうので、できれば行きたくないですが、行き先が魅力的であれば話は別です。自分では行きにくい、海外のラグジュアリーなリゾート地で、ほとんどが自由時間で旅行を満喫できるのであれば、参加したいと思います。
海外でのんびりできる旅行なら参加したい
特に、ベトナムやタイなどの東南アジア諸国で、水上コテージに宿泊することができれば、社員旅行と言えどもプライバシーが守られるし、のんびりできるので魅力的です。
旅行のスケジュールが詰まっていたら、観光で移動する際や食事する時に上司や先輩に気を使って、自分が見たいお店をじっくり見ることができなかったり、お腹いっぱいに食べることができないなどのデメリットがありますが、リゾート地で海に入ったり好きな時に休憩できるリラックス系の旅行であれば、のんびりできるので良いです。
もし、観光に参加したい人がいれば、その分だけ各自が追加料金を支払ってツアーに参加すれば良いですし、数回みんなで一緒に食事をする機会があれば、会社の人とも仲良くできるきっかけになるので社員旅行に参加した意味があると思います。
旅行の企画や案内を添乗員さんなどに全て任せることができれば、年下の人が気を使いすぎずに全員が楽しめる旅行になると思うので、そのような社員旅行であれば参加したいです。
学生のサークルのような部旅行にウンザリ(29歳・女性・建設業施工管理職)
静岡県伊豆市
私の勤める会社では社員全員で行く社員旅行はありませんが、所属部署ごとの社員旅行があります。所属部署単位での計画となるので、社員旅行を計画しない部署もあるのですが、私の所属部署は部課長が率先して計画・参加者を募っており、事実上強制参加の社員旅行です。
宿泊先が有名ホテルや旅館といった魅力があれば二つ返事で参加を希望しますが、宿泊先は部員全員が泊まることのできる民家の1棟借りで、食事も自分たちで食材の買い出しから調理までしなければならない、まるで学生のサークル旅行です。
現地集合・現地解散でほぼ合宿
まだ宿泊先に着く前にレクリエーションや観光があれば楽しめる要素が増えますが、宿泊先へは現地集合・現地解散で交通費も各自持ちなのです。
旅行を計画するのは部課長であっても、実際の買い出しや調理は必然的に若手社員が率先してやることになります。また、深酔いをしてしまう人が多く出るため、深夜まで大騒ぎが続きます。
私はアルコール耐性が弱く、お酒を飲むことができないので、酔っ払いの対応や片付けに追われてばかりで殆ど楽しむことができません。先輩社員に絡まれている若手社員も多く見かけます。親睦会と称した飲み会は深夜遅くまで続き、落ち着いて寝ることもできません。
翌朝も早朝から朝食作り・片付け、宿泊先の清掃とバタバタしている間にチェックアウトの時間になり解散となります。 私を含め若手社員の間では部の旅行のことを影では「合宿」と呼んでいます。それほど部の社員旅行に行きたくないのです。
家族同伴の社員旅行はプライベートまで会社に毒されるので絶対にイヤ(36歳・男性・営業)
グアム
強制ではないといっても家族同伴可で自由参加の和気藹々とした社員旅行という建前で勧誘されるので断るとその後の自分自身の会社での立場が気まずくなるので結局強制とほぼ変わり無いです。
社員限定の社員旅行なら元々仕事で顔を合わせている同僚や上司と社交辞令や建前の交流に徹して今後の仕事を円滑に回す為の業務の一環としてまだ割り切ることができるのですが、そこに自分の家族や相手の家族が絡んでくると初対面の挨拶だの相手の家族構成や名前を記憶したりだのわずらわしい事が多すぎます。
自分本人だけでなく、妻や子供までが上司の家族にぺこぺこ頭を下げて気を使わなければならないのも家族に悪いし気の毒です。
家族一緒は本当に疲れる
強制ではない社員旅行の厄介なところは建前上は昼間は個々の家族で自由行動となっているのですが、結局は上司だの先輩を後輩が家族ぐるみで接待じみたことをしなければなりません。
一緒に楽しめる観光スポットを下調べしたり、両替などの段取りをしたりと仕事よりもはっきり言って面倒です。
正直言うと、会社の企画側で終日スケジュールを固定してくれたほうがまだましです。
そしてまた厄介なのが、社員旅行で上司や先輩から「家族ぐるみの付き合い」認定されてしまうと社員旅行終了後もホームパーティーなどに家族でお呼ばれするような関係になってしまって最終的にプライベートまで会社に毒される結果に陥るのが本当にイヤです。
まあ、イヤな顔ひとつ見せずに楽しんでいる振りは社会人なのでしますけど。
社員旅行参加の意義は自分で作り出す
行く前は面倒だったけど、行ってみたら思わぬ収穫があった、という人がいるかと思えば、楽しみにしていたけど、行ってみるとつまらなく感じた、という人もいるのが社員旅行です。
参加をしないのであれば、後で「こんな事なら参加をしておけば良かった」と思わなくて良いように、計画を立てて何かを得る機会にしても良いでしょう。
参加をするのであれば、受け身にならず「この旅行で○○をすることを目標にする」など、目的意識を持って臨む方がより楽しめるのではないでしょうか。
いずれにしても時間の使い方はあなた次第です。しっかりと計画を立てて、有意義な時間にしたいものですね。
最後になりましたが、不参加の決定をしたのであれば、できるだけ早い段階で運営側にその旨を伝えましょう。何だか言いにくくてギリギリに…なんていう事になると、社員旅行に参加するメンバーへ迷惑がかかってしまいますので気を付けましょうね。