薬剤師の転職シーンで長い間続いている人材不足による超売り手市場は、薬剤師を雇う側(企業や病院)にとっては大変悩ましい問題ですが、職探しを行う薬剤師にとっては好都合な状況カモしれません。…しかし、本当にそうなのでしょうか?
薬剤師不足は、現場で活躍する薬剤師にとっても決して無関係な問題ではありません。ここでは、人手不足に悩む職場や薬剤師について、原因や改善策などをとことんわかりやすくまとめました。薬剤師不足時代をかしこく利用するヒントとしてお役立てください。
薬剤師の転職事情
平成26年に厚生労働省がまとめた労働市場分析レポートによると、薬剤師の有効求人倍率は10.05倍。エリアや条件によって差はあるでしょうが、薬剤師の転職シーンでは、まだまだ引く手数多の売り手市場が続いている事がうかがえます。まずは転職事情にスポットを当てて、薬剤師不足についてを考えてみましょう。
薬剤師不足の原因をおさらいしよう!
『薬剤師 転職』と検索すれば、「人材不足の売り手市場!」という情報が実に多く見受けられます。転職を目指す立場にとっては喜ばしい薬剤師不足ですが、そもそもなぜ、こんなにも薬剤師が足りない事態が続いているのでしょうか?
4年制から6年制へ移行…大学制度の変革
長らく続いている薬剤師不足の原因には、それまで4年制で卒業できた薬学教育が、平成18年から6年制へ移行した事が大きく関わっています。これは、医薬分業の発展や医薬品の創製・適応における科学の進歩など、薬剤師を取り巻く状況が大きく変化している中、より社会や医療現場へより貢献できる質の高い薬剤師を育む事などを目的に進められた変革でした。
ところが、同時に新卒薬剤師が輩出されない『空白の2年間(010年〜2011年)』を作る要因となってしまう事に…。
6年制移行のタイミングに、薬学部の新設ラッシュが起こった
とはいえ、6年制移行にともなう『空白の2年間』問題はもともと想定されていた事でした。にも関わらず、薬剤師不足が問題視されていなかった理由には、「6年制移行で薬学部の人気が高まる」と考えられていた点が挙げられます。事実、6年制移行のタイミングには、薬学部の新設ラッシュが巻き起こりました。
ところが蓋を開けてみれば、さほど人気が高まらなかったのが現実。新設された私立薬学部は学費が高く、また大学側は国家試験合格率を高めるために生徒のふるい落としを行いました。結果、費用面や進級・卒業試験など様々なハードルをクリアし、最終的に国家試験の合格にまで漕ぎ着ける事のできた新卒薬剤師は、当初の想定を大きく下回る数になってしまったのです。
薬剤師過剰時代は、本当に来るの…?
長らく叫ばれ続けている薬剤師不足は、より好条件な転職を目指す薬剤師にとって心の励みにもなる現象でした。しかし中には「いつかは薬剤師過剰時代が来て、就職・転職がむずかしくなる」という意見も存在しています。
薬学部の新設ラッシュが薬剤師過剰時代のきっかけに!?
薬剤師過剰時代が予測される一つ目の理由には、上記(『6年制移行のタイミングに、薬学部の新設ラッシュが起こった』)で紹介した薬学部の新設ラッシュが関わっている様子。6年制移行のタイミングに薬価大学や薬学部が多く新設されたため、近い将来では薬剤師の数が急増すると考えられていたのです。
上記でお話しした通りこの理由については、薬剤師不足の改善に功を成したとは言えないカモしれません。空白の2年間以前と以降を比較しても、国家試験の合格者が急増した様子は見受けられないので、薬学部の新設ラッシュが理由となる薬剤師過剰時代が来ることもしばらくは無いのではないでしょうか。
6年制移行と同時期にスタートした「登録者販売制度」が薬剤師過剰を招く!?
とはいえ、一概に「今後も薬剤師不足が改善されることはないので、就職難になる心配も無い!」と断言することもできません。薬剤師過剰時代が予測される理由には、薬学部の新設ラッシュ以外の様々な要因が存在しているのです。
その一つとして挙げられるのは、6年制移行と同時期にスタートした登録者販売制度。それまで一般医薬品を販売するためには薬剤師免許が必要だったのですが、法改正により平成21年以降は該当試験に合格し都道府県への登録を行えば、薬剤師でなくても医薬品を販売することが可能になったのです。
この改正により、ドラッグストアーなどでは薬剤師を採用せず、登録者販売制度の登録をした従業員に医薬品販売を任せるケースが増えていると言われています。
永遠なんてものは無い!薬剤師不足時代も、いつかは終焉を迎えることに…
冒頭で触れた薬剤師の有効求人倍率を知って、「この調子なら、しばらくは安泰だ」と胸をなで下ろしている転職希望者の皆様!油断は禁物カモしれません。薬剤師不足時代の終焉については様々な説が囁かれていますが、その中には今後数年以内に薬剤師過剰時代が訪れることを指摘する声も存在しているのです。
また全国的に「薬剤師が足りない」と言われてはいるのですが、都市部と地方とでは当然差があります。郊外に比べ、薬剤師の人材も多い街中ではすでに人材に困っていないケースもあるでしょう。やみくもに「薬剤師は売り手市場なんだから、働き口に困ることはない!」と信じきることはあまりオススメできません。
これから転職を志すのであれば、薬剤師過剰時代へも目を向けた職探しを進めるべきなのではないでしょうか。目先のメリットに踊らされず、ぜひ生涯にわたり活躍を続けられる職場との出会いを目指してください。
潜在薬剤師の復帰で人手不足が改善できるカモ!?
薬剤師不足には、上記で紹介した以外にも潜在薬剤師の存在が関わっていると言われています。以下では、薬剤師不足の改善策として期待される潜在薬剤師の復帰についてをお話しします。
潜在薬剤師とは…
潜在薬剤師とは、薬剤師の資格を持っていながらも、薬剤師として活躍をしていない人たちの事を指しています。
『現役を退いている』という印象から、なんとなく『潜在薬剤師=高齢者』といったイメージを持たれがちですが、じつはそれだけではありません。もちろん年齢的な理由から現場を退いたケースも多いのですが、薬剤師の男女比は3:7と女性が多く、そのため結婚や出産・育児などのライフイベントを理由に、薬剤師としての活躍をリタイアしてしまった若い女性薬剤師が大勢存在している事が分かっています。
ママ薬剤師へのサポートに積極的な企業も多数登場
潜在薬剤師の中には、「家事や育児との両立が叶うなら、復帰したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。そして彼女らの復帰が叶えば、薬剤師不足の改善を望む職場にとっても大きなメリットとなるはずです。事実、薬剤師不足に陥っている企業や病院の中には、潜在薬剤師の復帰を待ち望んでいるケースも珍しくはありません。
ママ薬剤師へ行われているサポートの例
- お子様の預け先が確保できる「託児所付きの職場」!
- 急な病気や怪我にも対応できるための「雇用形態の変更(パートや契約社員など)」!
- 久しぶりの仕事でも安心できる「復職支援研修」!
などなど…
ママ薬剤師のライフワークバランスをサポートする事で、貴重な人材を確保しようと取り組む求人案件も多く発生しています。潜在薬剤師が職場復帰を目指す際には、このようなサポートを受けられる職場に狙いを定めるといいカモ。転職サイトのコンサルタントにその旨を伝え、スムーズで負担の少ない復帰を目指してみてはいかがでしょうか。
人材不足が引き起こす薬剤師のストレス!原因と改善策について…
転職を志す薬剤師にとっては好都合な薬剤師不足ですが、現場で活躍する立場となると話が変わってくるカモしれません。職場の環境や状況によっては、薬剤師本人も薬剤師不足に苦しめられているケースも存在しています。
以下では、薬剤師不足が薬剤師本人のストレスにつながる原因と、その改善方法についてをお話しします。
職場の人材不足が原因となる薬剤師のストレス
職場の人手不足は、薬剤師を取り巻く労働環境の悪化を招くと言われています。以下では、その具体的な内容についてをお話しします。あなたが置かれている環境に、心当たりはありませんか…?
業務がキツい…
薬剤師が足りていない、という事は、足りない分を従業員が補わなくてはいけない、ということ。多忙な職場では、一人で薬局を任される『ワンオペ状態』や、出勤から退社まで一息つく暇もなくグルグル働き続ける…というケースも多い様子です。ただでさえミスの許されない薬剤師のお仕事。調剤過誤の不安に脅かされながら多忙な業務をこなすことに疲れはてて、退職や転職を考えてしまう薬剤師も珍しくはありません。
休みが取りにくい…
多忙な業務を少人数でまわしている職場では、当然休みが取りにくい事態も頻発します。求人票には『週休2日』と記載されていたにも関わらず、採用された後になって「実質、週1でしか休めていない!」と気付かされるケースも多いでしょう。またママ薬剤師の方では、休みや早退が取りにくいため、お子様の急な病気や怪我に対応することが難しくなってしまうリスクも考えられます。薬剤師不足は、薬剤師本人のプライベートをも脅かしかねないデメリットを孕んでいるのです。
人間関係がツラい……
女性の多い薬剤師という職業には、人間関係によるストレスがつきものです。そこに多忙な業務と人手不足が加われば、対人関係によるトラブルのリスクはさらに高まってしまうでしょう。転職を志す薬剤師のほとんどが、退職・転職理由のとして「人間関係のストレス」を抱えていると言われています。人手不足によるピリピリとした空気は、同じ職場で働くメンバーにとって精神的な負担へ繋がっているのカモしれません。
ストレスへの対処法の紹介
人手不足な職場の薬剤師を取り巻く、様々なストレス…。ある調査によると、20〜30代の女性薬剤師のうちおよそ8割が「仕事に関するストレスを抱えている」と答えたのだとか。ストレスとうまく付き合っていくスキルも、薬剤師として必要なのカモしれません。以下では、仕事のストレスとうまく付き合うためのテクニックを紹介します。
職場の環境に馴染む工夫をはじめてみては?
職場の環境(忙しさや人間関係)を変えることよりも、自分を変えてみることの方が簡単であるケースも。言い方は良くありませんが、ある程度の開き直りが心を救うこともあるでしょう。多忙な業務や馬の合わない上司・同僚への期待を辞めて、「こういうものだ」と割り切ってみると、今よりも視界が広がるカモしれません。
規則正しい生活を心がける
規則正しい生活を心がけ精神バランスを整えることは、自律神経のリズムを安定させストレスへの耐性をアップさせます。睡眠の時間や質、食事の内容などを振り返り、ぜひ健やかな生活習慣なのか?を見つめ直してみてください。
愚痴を言える友人や同僚を確保する!
一人で抱えているストレスは、誰かに話すことで少しスッキリできるカモしれません。仕事に差し障りのない愚痴相手を作り、イライラをこまめに発散できる環境を整えておくことをオススメします。家族や友人、同僚など、身の回りの心許せる仲間を探してみてはいかがでしょうか。
プライベートで息抜き!
旅行やショッピング、趣味やスポーツなど、休日を思いっきりエンジョイすることは最もポピュラーなストレス発散法です。休みに計画した楽しみは、平日のストレスを乗り切る活力にも繋がるでしょう。もちろんこの方法は、プライベートを確保できる(休みが取りやすい)ことが前提となります。
そのストレス、転職で回避できるカモ!
薬剤師不足だからこそ、労働環境が悪化してしまう職場が存在しています。しかしその半面で、薬剤師不足を改善させるために環境を整えようと動き出す企業や病院も少なくはありません。近年ではどこの薬局も人材不足に頭を抱えていると言われていますが、その問題への姿勢は職場ごとに違いがあるのです。
あなたは、薬剤師不足とどのように向き合う職場で働きたいと感じるでしょうか。
「薬剤師が少なすぎて、業務が忙しすぎるカモ…」
「休みが取れなくて、プライベートが全然充実できていないカモ…」
「職場のピリピリした空気から、メンバーの関係は最悪カモ…」
もしも今現在抱えている悩みの原因が、職場の人手不足にあるのだとすれば、そのストレスは転職によって回避することも可能なのカモしれません。
薬剤師不足のしわ寄せは、薬剤師本人にも無関係ではない!
いかがでしょうか?ここでお話ししたことをまとめると、以下のポイントが重要です。
- 薬剤師不足から、薬剤師の有効求人倍率は10.05倍!
- 薬剤師不足の原因1:大学制度の変革(4年制から6年制への移行)
- 薬剤師不足の原因2:薬学部の新設ラッシュ後も、新卒薬剤師の輩出は伸びなかった
- 薬学部の新設ラッシュが、薬剤師過剰時代を招く要因になるとは言い難い
- 平成21年以降の登録者販売制度により、薬剤師でなくても医薬品を販売することが可能になった
- 「今後数年以内に薬剤師不足時代が終わる」説も…薬剤師過剰時代へ目を向けた職探しを進めるべきカモ!
- 潜在薬剤師の復帰が、薬剤師不足を改善させるカモ!
- 子育て中の潜在薬剤師による復帰をサポートする求人案件も発生している
- 薬剤師不足は、薬剤師本人にも様々なストレスをもたらす
- 人手不足によって発生したストレスとうまく付き合うテクも、ある程度は必要カモ!?
- 人手不足によるストレスを根本的に改善させる方法として、転職も有効カモ!
薬剤師不足について、薬剤師の就職・転職シーンを売り手市場へ導いた喜ばしい問題だと受け取る方は珍しくないでしょう。たしかに人手不足に悩む企業や病院からは、貴重な薬剤師を募るために魅力的な条件を掲げた求人案件が発生することも珍しくはありません。
しかし、薬剤師本人に全くデメリットがないのかといえば、そうとも言い切れないのではないでしょうか。あなたが今現在抱えている仕事のストレスも、ひょっとすると原因は薬剤師不足にあるのカモしれないのです。心当たりがある方は、ぜひ薬剤師不足時代の恩恵が授かれるうちに、長く勤め上げることができる恵まれた環境への転職を目指してみてはいかがでしょう。