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学習塾講師の知られざるブラックな労働環境

生徒達のために日々奮闘する学習塾講師を取り巻く「ブラックな労働環境」とは

世間で取りざたされている労働問題はいわば氷山の一角。フタを開ければ「真っ黒」な職場はまだまだあるのが今の日本の現実。

ブラックな労働環境がニュースにでもなれば、経営陣は世間の批判をかわそうと慌てて環境改善に走るものの、根本解決にまでは至っておらず、相変わらず厳しい環境下で労働を強いられている人は多いものです。

学習塾業界もまたブラックと呼ばれるようになって久しいですが、そんな声に業界がかき消されるどころか、少子化による影響など全く感じさせないような勢いで市場規模を広げている成長産業です。

その背景には、厳しい労働環境で日々生徒たちのために奮闘する学習塾講師達の苦労があるのです。

少子化もなんのその!市場拡大の影でブラックな労働環境に泣く学習塾講師

駅周辺などをちょっと見渡せば、CMなどでも目にしたことがあるような学習塾がいくつか目に入るのではないでしょうか。経済産業省による平成27年の調査の段階では、全国の学習塾の数は48,572軒あることがわかっています。少子化と言われている今の時代にこの数字はかなり多い印象ですが、塾同士の生徒の取り合いを目の当たりにする今の子育て世代なら、それほど違和感はないかもしれません。

※参照:平成27年特定サービス産業実態調査|経済産業省

教えるだけでは務まらないのが学習塾講師

小学生のうちから塾に通う子どもは多く、中学生にもなればその割合は急増します。

そして、高校に入学すれば今度は大学受験に向けてまた塾に通うということはごく一般的なこととして受け入れられていて、教育において一番の責任を背負っているはずの学校ですら学習塾の存在に頼っている側面があることは否めません。

本来であれば、学習塾講師の仕事は生徒に勉強を教えることですが、それだけできても優秀な講師とは呼ばれないのがこの業界。むしろそれ以上に重視されているのが「営業力」です。

学習塾という事業は、生徒が増えなければ利益になりません。そうすると、「今いる生徒をやめさせることなく新規の生徒を増やす」ということが講師に課される最も重要なミッションになるのです。

講師達をさらに追いつめる「保護者対応」

学習塾に通ったことで生徒が良い結果を出せば、生徒や保護者からの信頼を得ることができます。そうすると、そこから評判が広がって紹介につながっていくという流れもあるので、生徒の目的を達成させることが営業の一環にもなるのです。

しかし、学習塾に通っている生徒はその全てがやる気のある子どもとは限らず、保護者の期待と現状がかけ離れているケースも珍しくありません。

子どもの学力を向上させるためには、学校や学習塾だけでなく「保護者の力」も重要です。学習は生活習慣との関係が深いので、保護者とのコミュニケーションがしっかりと取れている子どもは、学力を伸ばしやすい傾向があります。

しかし、学習塾に入れておけば学力は絶対に上がると信じて疑わない保護者も多く、自分の子供の学習状況や学力について把握していない保護者ほど、厳しいクレームを寄せてくるという現実があります。

そのような保護者対応も学習塾講師の仕事。学習指導をする立場とはいえ相手はあくまでも「お客様」なので、どんなことがあっても「やめさせてはならない」という上からの圧力とお客様の圧力の板挟みに苦しむことになるわけです。

学習塾で教えることができる時間は限られているよね。だからこそ家庭学習をしっかりとしなければ成績は上がらないんだ。
目的意識を持って勉強をしている生徒や保護者の声かけがある生徒なら、家庭に戻って勉強するカモしれないけど、自分の意思に関係なくやらされている生徒や保護者の声かけがない生徒は、いくら塾に通っても成績は上がらないし、逆に落ちてしまうことだってあるカモ。
それでも「お客様」をつなぎとめなきゃならない塾講師の仕事はけっこう大変カモしれないね。

競争の激化でブラック化する学習塾

学習塾講師に課されている仕事やノルマはきついものですが、それに対する賃金の低さと時間外業務の多さが「学習塾のブラック化」をさらに増長させています。

学習塾講師といえば、アルバイトの学生でもかなり稼げる部類だったはずですが、近年では他のアルバイトとの差がほとんどないほどにまで低賃金化してしまいました。

低賃金の理由は「個別指導」の増加です。個別指導と聞くと1対1の授業と思ってしまいがちですが、2対1や4対1など当たり前。生徒や保護者の多くが想像している「個別」とは違うケースが多いのも近年の個別学習塾の傾向です。

「個別指導」ということで集団塾よりも授業料は高く設定されていることが多いですが、講師は低賃金かつ重労働。同じ学年、同じレベルの生徒を一度に教えるのではなく、それぞれが違う学年、違うレベルなので、授業前の準備はしっかりと行っておかないと短い時間で対応しきれません。

また、授業後は生徒の見送りと事務処理で残業です。アルバイト講師に関しては、授業時間外の時給が支払われないことが問題になったこともあって多少改善の傾向も見られますが、専門職とは思えない時給の低さで、人材もなかなか集まらないのが現状です。

高い授業料を支払っている保護者にしてみれば、それに見合うだけの「成果」を求めるのは当然のことかもしれません。それは、入塾に至るまでに魅力的な話で生徒や保護者に希望を持たせている学習塾側のやり方も大きく影響しています。

だからこそ講師は生徒に向かう時間に集中して結果に導きたいと思うのに、それ以外のことに多くの時間と労力を取られ、低賃金でもなおそこで頑張り続けるしかない状況に追い込まれるのです。

社員もアルバイトも生徒や保護者から見れば同じ「講師」だから、教える以上は責任を持って仕事をしなければならないよね。でも、その責任に対してもらえる給料が低いとなれば、よほどその道を目指している人でもなければ敬遠してしまうカモ。

「ベテラン講師の雇い止め」の事例からわかること

20年以上もずっと契約更新をしながら大手学習塾で講師として働いてきたベテランが、50歳を過ぎてから年齢を理由に雇い止めを通告され、裁判で雇い止めの無効を勝ち取ったという事例があります。

結果として雇い止めは無効になりましたが、この事例から見えてくるのが、人件費の高いベテランと人件費の安い若手を入れ替えてコストカットしたいという学習塾側の思惑です。

これぞまさにブラックという事例だけど、これが学習塾という世界の現実でもあるんだよね。学習塾として本当に良いサービスを提供したいなら、ベテラン講師の経験や知恵だって必要なはず。業界がブラックからホワイトになるには、運営側の社会貢献意識をもっと高める必要があるカモね。

問題は労働環境であって仕事そのものではない

やる気のない生徒への学習指導、我が子と我が身を顧みず結果に不満を抱く保護者のクレーム、運営側からの厳しいノルマやプレッシャーにトドメの低賃金と、学習塾のブラックな面ばかり見てしまうと、もうこんな仕事は嫌だとしか思えなくなってしまいそうですが、純粋な「学習塾講師」の仕事はとてもやりがいのある楽しい仕事でもあります。

生徒に勉強がわかる楽しさを教えること、目標に向かって努力する生徒を励ましながら二人三脚で頑張って成功した時の感動、生徒や保護者から感謝された時の喜びなどは、学習塾講師であれば経験している人も多いはずです。

低賃金でも辞められない人の多くは、講師の仕事に誇りを持っており、教える仕事が好きなのです。だからこそ、志ある講師達が思う存分に力を発揮し、十分な対価を得ることができるよう労働環境の改善が強く望まれます。

塾の先生の励ましが一生の宝になっている生徒たちも大勢いるよ。
学校の教師とはまた違った立ち位置で貢献できる学習塾講師の仕事がもっと魅力的な仕事になれば、学習塾業界はもっと良くなることができるカモね。

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