訪問介護の中でも、その方の実情に応じて24時間必要な時に必要な量の訪問介護や看護を一体的に、低額で利用できるサービスがあります。
実は意外と知られていない、このサービスについて今回は詳しくご紹介していきます。
「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは、どんなサービス?
定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは、24時間連絡体制を整備し、訪問介護と訪問看護を組み合わせ、必要な時間に必要な量を定額で利用できるサービスです。
緊急時の突発的な介護にも、要請に応じて対応、平成24年4月から始まった、地域密着型に分類される新しいサービスになっています。
要介護度が高い方や独居、認知症の方でも安心してご自宅での生活を続けていただくため、介護職員と看護職員が連携し、通常の定期的な訪問はもちろん、24時間の連絡体制のもとで下記の4つのサービスを複合的に提供します。
定期巡回サービス(定時での訪問介護サービス)
利用者の心身の状態、家族の都合など状況に合わせた上で、1日に複数回の訪問介護サービスを提供します。
サービスの主な内容は以下です。
- 安否の確認
- 起床のお手伝い(着替え、水分補給、移乗など)
- オムツ交換、トイレ誘導などの排泄介助
- 服薬介助
- 配膳や下膳
- 体位変換
安否の確認や健康のチェックだけのために訪問するといったことも可能となっています。
随時対応サービス(24時間オペレーターが常駐し対応)
利用者や家族が緊急用の携帯電話を使って、24時間常駐しているオペレーターにいつでも連絡できるサービスになります。
対応オペレーターは、介護福祉士、社会福祉士、ケアマネジャーと言った専門の資格者で、必要に応じて随時訪問の手配をします。
随時訪問サービス(緊急時や予定外に必要となった際の訪問介護サービス)
転倒してしまい起き上がれない、体が痛くて動けない、失禁してしまったなど、随時対応サービスの判断により、訪問介護員などが訪問するサービスです。
万が一に依頼が重なってしまった場合、緊急度がより高い利用者様から訪問していく場合もありますので覚えておきましょう。
訪問看護サービス(主治医の指示のもとに行う訪問看護)
医師の指示に基づいた上で、訪問看護のサービスを行います。
看護師が定期的に利用者の自宅を訪問し、服薬の管理、褥瘡の処置、排便などの療養の補助を行うサービスとなっています。
ちなみに訪問看護は、主治医の指示がある場合のみサービス提供が行われます。
誰が利用できるの?
ここまで定期巡回・随時対応型訪問介護看護の特徴について解説してきました。
しかし重要な点が残っています。それは利用できる人についてです。
実は定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用を受けるにはある程度の条件が必要になります。
その条件に関して詳しく解説していきましょう。
利用要件
まず利用できる条件として要介護1以上の方である必要があります。
また注意点として地域密着型サービスであるため、各市町村による事業所の指定が必要になります。
わかりやすく言えば、事業所が所在している自治体の住民しか利用できないということになります。
併用について
併用に関してですが、他の訪問介護、訪問看護、夜間対応型訪問介護との併用はできません。
具体的な訪問のイメージは?
定期巡回の特徴である1日に複数回訪問できること、看護との連携が強化されていること、随時的な訪問が可能なこと・・・こうしたことがご利用者の生活にどうプラスになるのでしょうか。実際のケースで見て行きましょう。
ヘルパ
→定期的に1日4回(朝・昼・夕・夜間)訪問して排泄介助と体位変換を実施。
看護師
週1回訪問し、健康チェック、必要な医療処置
大量の便失禁があった時は、随時訪問をして対応。
自宅で介護される方にとって排泄のケアは大きな負担。そこをヘルパーが定期的に複数回訪問し、更に随時対応することで負担の軽減を目指しています。 またシーツ交換やパジャマの着換えも行い、同時に健康状態にもきちんと配慮します。。訪問看護とヘルパーは互いに情報交換をして、ケアマネージャーへの情報提供も行います。
ヘルパー
1日3回(朝・昼・夕)訪問し、配食弁当の温め、配膳。服薬。
定期巡回は1回の訪問時間が最大30分と短いのですが、身体介護だけでなく生活支援も行っています。
例えば
洗濯
朝の訪問で洗濯機を干す 昼の訪問は洗濯物を取り込む 夕の訪問で洗濯機を回す
買い物
朝の訪問で必要な買い物の聞き取り 昼の訪問で買い物
掃除
朝の訪問でシーツ交換 昼の訪問で掃除機掛け 夜の訪問でトイレ掃除
各訪問でリレーのように引き継ぎながらケアを組み立てていきます。
お一人暮らしの高齢の方の場合、転倒などのアクシデントが心配ですが、こうした場合には随時訪問で対応します。
ご利用者の体調不良などヘルパーでは判断が難しい場合、看護に連絡し連携して対応します。
勤務する職員の思いとは
現場で介護を行っているヘルパーは、定期巡回が新しい制度のため苦労してしまうことが多いようです。
- 1回の訪問時間が短いため、ご利用者から「すぐ帰ってしまう」と言われてしまう。
- 短い訪問時間でケアプランに決められたケアを行わなければならないため忙しい。
その一方、巡回訪問ならではの良さも感じています。
- 1日に何度も訪問できるため、ご利用者の状態がつかみやすい
- 看護と連携しているため、気になる状態の時すぐに相談できて心強い
ご利用者が従来型から定期巡回へケアプランを変更された場合、介護者の方も含めてその変化に戸惑われてしまうようです。
定期巡回ならではの役職「オペレーター」の声も聞いてみましょう。
- 声だけの対応になるため、ご利用者の正確な状態を把握しにくい
- 認知症などご自分の状態を伝えることが苦手な方も多い。状態をつかむため「はい、いいえ」で簡単に答えられるような言葉かけの工夫が必要
- 朝、夕など定期訪問が混み合っている時間帯だとお待たせしてしまう場合があるのが心苦しい
ご利用者の中には「話し相手が欲しくて」何度もコールしてしまう方も。
コールの緊急度を判断し、実際にヘルパーを派遣するかの判断をその場でしなければならない難しさがあります。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護の制度が始まる前は「この訪問の後、一人にして大丈夫?」と後ろ髪引かれるようなご利用者も多くいらっしゃいました。
このサービスであれば「この後も訪問がある」「なにかあれば随時で呼んでもらえる」と思えます。
ご利用者、家族だけでなく、訪問するヘルパーにもこんな安心感が得られるのです。
その反面、ヘルパーひとりが担当するお宅の数が多くなってしまっています。
8時間勤務の中で10軒近く訪問することは日常茶飯事。
介護スタッフの人手不足もあり、なかなか忙しさは変わりません。
それでも、ご利用者の状態に合わせてケアプランが柔軟に組める、この制度はやりがいも多くあります。