水を飲んでいて頭が痛くなったり、気持ちが悪くなったことはありませんか?そんな場合は「水中毒」になっている可能性があります。
熱中症が気になってついつい「水分摂らなくちゃ」と思いがちですが、実は水の飲み過ぎは非常に危険。「水中毒」になると、さまざまな症状を引き起こし、命にも関わります。
そこで今回は「水中毒」の原因・症状、療法や対処法などを調べました。
この記事を読んで、あなたやご家族が水中毒にならないよう、正しい水との付き合い方をマスターしてくださいね。
目次
水の過剰摂取に注意!「水中毒」について
「水中毒」は大量の水分を摂取することで、血液中の塩分(ナトリウム)の濃度が急激に低下し、「低ナトリウム血症」やけいれんなどが起こる中毒症状で、死亡事例もあります。
ここでは、ぜひ覚えておいてほしい水中毒の基本情報をまとめました。
水中毒の原因
水中毒は、水分を過剰に摂取することが直接原因で起こります。
通常摂取した水分量は尿や汗として体外に排せつされますが、一定量を越えると腎臓が水分を処理しきれず、体内で水分が過剰化。
それによって血液中のナトリウムの濃度が低下し「低ナトリウム血症」を起こします。
ナトリウムは筋肉の活動や神経の信号伝達等に使われますが、それが阻害されることでさまざまなトラブルが生じるのです。
体質や病気等で低ナトリウム血症気味の場合、より水中毒のリスクは高まります。
なお、ストレスなどによる「心因性多飲症」という病気や、「抗利尿ホルモン分泌異常症(SIDH)」などの身体疾患で大量の水を飲んでしまい、「水中毒」になる場合もあります。
病的な原因が疑われる場合は医療機関に相談してください。
どれくらい水を飲んだら水中毒になるの?
一般的に、水中毒は次の2つのケースで起こります。
- 1日に3L以上の水分を摂取する
- 短時間に1L以上の水を飲む
ただし個人差もあります。
以下4つのうちのどれかに当てはまる方は、「低ナトリウム血症」になりやすいので、より注意が必要です。
- 乳幼児や高齢者
- 腎臓関連の病気の方
- 減塩を心がけている人
- 普段から汗をかきにくくむくみやすい人
水以外でも水中毒になる場合もある
水に限らず塩分が不足する飲み物では水中毒になる危険があります。
「熱中症や脱水症状時は、水ではなくスポーツドリンクの方がいい」ということは周知されはじめていますが、スポーツドリンクも脱水時に大量摂取すると、塩分が不足して低ナトリウム血症になることがあります。
水中毒になったらどんな症状が出る?
水中毒になると、まずむくみや冷えなどの症状があらわれます。
そのまま症状が進むと脳への伝達に支障が出て、
- 頭痛やめまい
- 意識障害
- 意識混濁
などの重篤な症状に移行し、死にも至ります。
通常の血中ナトリウムイオン濃度は135~145mEq/L程度です。
これが、125mEq/Lを下回ると、意識障害などの中毒症状を引き起こす場合があります。
水分の過剰摂取直後に危篤状態になる場合もあるので、水中毒が疑われたらすぐに対処することが必要です。
軽度の症状 | |||
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むくみ | |||
中度の症状 | |||
倦怠感 | 頭痛 | めまい | 吐き気 |
手足の冷え | 下痢 など | – | – |
重度の症状 | |||
性格変化 (不安になる、怒りっぽくなるなど) |
痙攣 | 発熱 | 自律神経症状 |
昏睡 | 嘔吐 | 尿失禁 | 呼吸困難 など |
誤った熱中症対策が水中毒につながることも
水中毒は、誤った熱中症対策が原因で起こることも多いです。
熱中症は年間5〜6万人が救急搬送され約600人が亡くなっているので、対策は必要ですが、「水分を多く摂ればいい」というものではありません。
適切な飲み物を、適量、適切なタイミングで飲むことが大切。
喉が渇いてから一気にたくさんの量を飲むのではなく、意識的して随時、適量を補給するようにしましょう。
水中毒にならない上手な水の飲み方
水中毒を恐れて水分を控えすぎると、今度は脱水症状や熱中症リスクが高まるので、上手な水の飲み方をマスターしましょう。
ここでは水中毒にならないための水の量や水を飲むタイミングなどをまとめました。シミュレーションもしてみたので、ぜひ参考にしてください。
水中毒を防げる1日の水の摂取量は?
厚生労働省の「健康のため水を飲もう」推進運動では「1日1.2〜1.5Lの水の摂取」を推奨しています。
胃が1回に吸収できる水分摂取量は200〜250mlなので、1回にコップ1杯程度を1日6~8回、トータルで約約1.5Lを摂取しましょう。
飲む時も一気飲みではなく、一口ずつ飲むことを心がけてください。
水を飲む最適なタイミング
身体に水が必要な時には喉が渇くので、喉が渇いたら飲むというのが基本です。
ただ、それだけで約1.5Lが確保できない場合は、以下4つのタイミングを意識して、こまめに摂取すると体に負担がかかりにくく、また水分不足にもなりません。
- 起床時・就寝前:睡眠中に失われた・失われる水分を補う
- 通勤・通学で歩いた後
- スポーツ時
- 入浴後
大量に汗をかいた後は、熱中症・脱水症状予防に塩分も取ろう
スポーツなどで大量の汗をかいた時は、水分とともに塩分の流出も多いので、ナトリウム補給ができるスポーツ飲料か、より塩分の高い市販の経口補水液を飲みましょう。
塩キャンディなど水分以外で塩分補給するのもよいですね。
ビールや、お茶、コーヒーなど利尿効果が高い飲み物は、次の3つの流れで低ナトリウム血症になってしまう場合があるので、塩分バランスも考えて摂取しましょう。
- トイレ回数が増え脱水症状が起きる
- 喉が渇いて水をがぶ飲み
- 低ナトリウム血症が発症
1日約1.5Lの水を飲む場合をシミュレーションしてみた
1日約1.5Lという数字だけで見ると「そんなに飲めない」「毎日となるとたいへん」と感じる人もいるでしょう。
そこで、ここでは続けやすいシミュレーションをしてみました。
- 起床時水コップ1杯:約200ml
- 食事の時(朝、昼、晩)お茶各1杯:約200ml×3=600ml
- コーヒー、紅茶1日2杯:約400ml
- お風呂上がり:水コップ1杯:約200ml
食事の時のお茶で調整すれば毎日約1.5Lも難しくはありませんね。
外出時に500mlのペットボトルを1本飲む場合は、その他で減らしてかまいません。
もちろん気候や体調に応じて多い日、少ない日があってもOKです。
水中毒になった時の治療法や対処法は?
水中毒は予防が肝心ですが、なってしまった時の対処法も知っておきましょう。
対処法を3つに分けて紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
水の排出を促す
以下の3つの方法で余分な水分を排出しましょう。
- ウォーキングなど適度な運動をする
- お風呂ではちゃんと湯舟につかる
- リンパマッサージなどで代謝を促す
飲む量のコントロール
水を飲み過ぎる傾向がある場合は、「コップ何杯」というように飲んだ水量を記録し、1日の量をコントロールしましょう。
医療機関での治療
急性で重篤な症状の場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
また、「心因性多飲症」など病的な原因が疑われる場合も、医療的な対処が必要なので、シロウト判断をせず医療機関に相談してください。
まとめ
今回は水中毒の基礎知識と対策などについて紹介しました。
3つの大切なポイントをもう一度、押さえておきましょう。
- 水を飲むタイミングに気をつければ、水中毒を回避できる
- 運動や入浴、マッサージなどで体内の水分を適切に排出しよう
- 病的な原因の場合もあるので、異常を感じたら医療機関に相談を!
熱中症対策とともに「水中毒」リスクが急上昇しています。
この記事で学んだ正しい対処方法で、あなた自身やご家族をしっかり守ってくださいね。